関西発・地方創生とマーケティング #16
なぜ祇園辻利は、お客さまから長く愛され続けるのか
2020/02/05
日本統治時代の台湾店舗は、現在はスターバックスに
9月に都ホテル京都八条で開催されたマーケティングカンファレンス「ウーマンズインサイトアジェンダ」で三好さんがお話されていた、3代目が日本統治時代に台湾・台北の茶舗を営まれていた建物が現在はスターバックスになっているという逸話が気になっていたので、「やはり何かあると思うんですよね」と話を向けると、「お茶がとりもつご縁でしょうか」と。
台湾では茶葉を商い、日本に戻って祇園でお茶とスイーツを提供するお店を開くことになる祇園辻利と、その跡に店舗を開いたスターバックス。やはり、その建物は飲料文化を発信するのに適したロケーションで、両者がその場所を選んでいるのは、単なる偶然ではなく必然ではないかと思います。
京都の粋は、「人」にある
最後に、京都についても伺いました。
「京都の粋は、人。京都に生まれ育った自分も京都について全て知っているかと言うと決してそうではない。また、外から見ると『京都らしい』と感じることも、自分たちでは当たり前すぎて、その良さが分かっていないことも多い。これはお茶についても一緒で、自分の肌に染み付いている京都を暮らしの中からもっと提案できることはないのか? お茶の愉しみをライフスタイルの中からもっと発信していきたい。お茶を通して人が出会い、大袈裟ではありますが、人々の心を豊かにするお手伝いが出来れば良いなと思っています」
歴史ある企業は、自社の核は変えずに、時代に合わせて変化しています。祇園辻利は、お茶を商い、初代は宇治で創業し、3代目は台湾に販売チャネルを広げて政治家とつながり、5代目は同じ京都でも祇園に店を構え、お茶を売るために抹茶アイスとパフェを開発し、6代目はさらに人の言の葉に乗るように仕掛けています。
自社の核は変えず、それを提供するためにチャネルや売り方を時代に合わせて変える。そして、その祇園辻利にとっての核は、お茶なのか、あるいは最後に三好さんがおっしゃったお茶を通して人の心を豊かにすることなのか。
急須で入れたお茶を飲みながら、そんなことを考えました。
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