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海外D2Cは日本で成功するのか。Allbirds 日本代表とマーケティング責任者が語る、今後の戦略

環境配慮は、消費者に確実に刺さっている




——Allbirdsは環境への配慮も重要なテーマとして掲げています。日本でもSDGsを含めて注目されてはいるものの、それが売りにつながるという実感を持てていない企業が多いと思いますが、いかがでしょうか。

竹鼻 たしかに、外部の調査では「環境への配慮は販売につながらない」という結果も見ましたが、Allbirdsに関してはすごく効いていると思っています。ブログやSNSを見ていても「履き心地が快適だ」という声はもちろん、プロダクトの成り立ちをきちんと調べて環境に配慮していることをハッシュタグをつけて発信している人がたくさんいます。全体のパイとしてはそんなに大きくないのかもしれませんが、確実に刺さっているという実感がありますね。

蓑輪 私も昨年から現在にかけて、かなり変わってきたことを実感しています。メディアからも、環境への配慮という観点から取り上げられる頻度が増えていますし、内容も深く掘り下げたものになっています。

東京五輪をきっかけに、さらに変わるでしょう。リサイクル金属でメダルをつくるなど環境への配慮やサステナビリティを打ち出していますし、アクティビスト(運動家)もたくさん来日します。そうした盛り上がりで、より関心が高まると思います。
 

ECより先にリアル店舗の出店は、日本が初ケース


——日本ではリアルな店舗を先に出店し、Eコマースは4月からスタートの予定です。グローバルではEコマースと店舗の売上の割合は、現在どの程度でしょうか。

竹鼻 グローバルではEコマースによる売上が全体の80%程度に及びます。特に欧州はEコマースしかしていない国がたくさんあります。もともとはECが先行し、あとから実店舗が追いかけるというケースになり、実は店舗だけで先行した最初の国が日本なんです。

——なぜ日本では先にリアル店舗を選ばれたのですか。

竹鼻 店舗確保のタイミングやロジスティックのパートナーとの契約など、いろいろな理由があったのですが、やはり日本市場は特殊です。大陸でつながる欧州であれば似通った国もたくさんありますが、同じアジアでも日本は中国とも韓国とも違います。まずは実店舗を設けて直接日本のお客さまの声を聞いて、そこからEコマースを開くことにしたんです。



——1号店の場所として、原宿を選ばれた理由は?

竹鼻 歴史的に見てもいろいろなファッションブランド、もしくはライフスタイルブランドが原宿や周辺の青山・千駄ヶ谷から生まれています。80年代のDCブランドブームも原宿から始まりましたよね。Allbirdsもサンフランシスコで設立されて3年半の起業家精神にあふれる会社。我われは、この場所に起業家精神が息づいていると思っています。

もうひとつ、原宿は若い人にとって今も昔も「自己表現する場」です。いろいろな人が集まり、いろいろな表現をしてきた場所だということも我われのブランドにぴったりでした。今後は、新たに始めるEコマースで得られる情報を生かして、お客さまがたくさんいる場所に出店していきたいと考えていきます。

——日本進出が多くのメディアで紹介されるなどPRが成功しているように思います。今後は、どのように日本での認知を獲得していこうと考えていますか。

蓑輪 PRについては、今は新しさや快適さという観点からメディアに紹介してもらっています。また、実際に履いてみてプロダクトの良さを実感して「これなら紹介できる」とSNSに投稿している人が多い印象です。今はPRエージェンシーと組んで戦略を練っていますが、まだ女性向けファッション誌にはあまり露出できていないので、今後アプローチしていきたいですね。

あと日本には、例えば藍染めなど植物由来の素材からつくっている服がありますよね。日本人は、日本生まれの素材を使ったり、日本企業とコラボレーションしたりするとすごく喜ぶので、サスティナブルなものづくりを行っている企業と組みたいと考えています。日本中を車で旅しながらパートナーを探したいですね(笑)。



——D2CではSNS上で話題になることを意識しているブランドが多いと思います。SNSの戦略については、どう考えていますか。

蓑輪 SNSでブランドとコンシューマーが対話することはプレミアムな体験になると考えているため、例えばブランドについてポストしてくれた人に「ありがとうございます」と返信したいと考えています。

ただ、SNSに広告を掲載するのは、ブランドの趣旨と違うなと感じています。Eコマースを始めれば必要になる部分もあると思いますが、まずはオーガニックに増えていくことを期待したいですね。

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