関西発・地方創生とマーケティング #17
「毎日そこにいること」シャープさん(山本隆博)
「広告が、嫌いになった。」
Twitterを担当する前は、テレビCMなどのマス広告の制作を担当してきたのですが、あるときから、広告というものが嫌われている現状に気づき、そして無理やり人の認知を得る行為、いわば札束で人をこっちに振り向かせるような行為に辟易として、私自身も広告が嫌いになっていきました。
そんなときに「SNSをやらないか」という声が掛かり、世間でもマス広告からWebへという自然な流れができていたこともあって、2011年からずっとやっています。
お前の話、面白いなと思わせるためには?
SNSを始めて分かったことは、SNSはマス広告を代替するものでも、規模を追求するものでもないということ。じゃあ何かと言うと、企業とお客さんが一対一で会話をしたり、ファンを増やしたりするものだと、私は認識しています。
そもそもSNSでは、フォローするのは友だちか、知人か、好きな人か、興味のあるコンテンツか。いずれにしても人間関係と好きなものでタイムラインをつくっていくものなので、普通であれば、そこにシャープという企業が入る余地はありません。
ならば、そこに入り込むためには、どうすればいいのか。
これは「お前の話は、面白いな」「お前の話なら聞いてやろう」と承認してもらうしかありません。それに気付かない人はキャンペーンでフォロワーを増やそうとするわけですが、もちろん数はやればやるだけ増えるけど、エンゲージメントは高まりません。巨大な規模が欲しいなら、マス広告をやるべきです。おそらくいまだ、マス広告ほどの規模を代替する手段はないと思います。
デジタルをやっている人に多いのが、数字のパフォーマンスをマーケティングの本質だと思っている人。そういう人からすると、私みたいなやり方を「なんでそんな手間のかかる面倒くさいことをするのか」と思うのでしょう。ですが私は長いスパンでやっているので。狩猟ではなく農業の感覚です。
ただ、「待てる人」と「待てない人」、「待てる会社」と「待てない会社」というのもあるので、私みたいな仕事を、そうは言ってもなかなかできないという気持ちも分かります。だからリソースを投入してすぐさまリターンを求める、自動販売機みたいな考え方の人は、私のやり方は無視してください。
たいていの家電は買い替えというかたちで選ばれます。そのサイクルはだいたい10年に一度。よく考えれば、冷蔵庫がツイートですぐ売れるなんてあり得ない。今すぐ買ってもらうなんて無理な話です。
でも、チャンスはいつか来るわけです。Twitter Japan社と共同調査したところ、シャープのフォロワーの85%がいつか買い物するときに「シャープさん」のアカウントが頭に浮かぶという結果が出ました。直ぐにリターンがあるとは思っていないので、それでいいなと。SNSの効用なんてよく聞かれますが、少なくとも未来の買い物に影響を与えることができると、私は考えています。