ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #22

「マスク先着順」販売の否定で、ドラッグストアの利益と働きがいが向上するかもしれない

 

贔屓(ひいき)による収益の変化


 日用品の小売業においても、「パレートの法則」は成り立ちます。

 パレートの法則は「2:8の法則」とも呼ばれ、顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割をあげているという法則です。全ての顧客を平等に扱うのではなく、2割の優良顧客を差別化することで8割の売上を維持し、高い費用対効果を追求します。

 ここでは日用品小売業のとある一店舗で、仮の数値として「①優良顧客」、「②通常顧客」、「③チェリーピッカー(特売の時期にのみ来店し、特売品のみ購入して帰る客のこと。美味しいところだけ摘んで、他には目もくれない客をさす)」、「④非会員」の4種類で、以下の売上比率になっているという妄想をします。パレートの法則ほど差が大きくない、現実的な想定です。
 
通常、顧客IDのない非会員は述べ客数しか測定できませんが、ここでは顧客同様にユニーク(重複のない一意の)人数で計算します。

 今回の騒動を事例として、騒動の期間(3カ月)にマスクやアルコール殺菌剤が店舗に1000ケ(20ケ×50回)入荷したとします。

 先着順販売で開店前から行列をつくる人は、チェリーピッカーの比率が高いことが想定されるため、毎回の20ケのうち11ケはチェリーピッカーが購入、残りを優良顧客1人、通常顧客4人、非会員4人が購入したとすると、50回の入荷で入手できる優良顧客はわずか50人になります。

 店舗を最もご愛顧いただいている優良顧客の5%にしか販売できないわけです。しかも実際は、開店前から並べる人だけが買えるため現実的にはもっと少ないでしょう。優良顧客の95%が必要としている商品を一度も購入できないという「お客さまが必要なものを、必要な時に、必要なだけ供給できない」悲劇的な状態です。

 では、優良顧客から優先的に買えるようにしたらどうなるでしょうか。仕組みについては後編で紹介しますが、ともかく1000人の優良顧客全員が購入する機会をつくるわけです。もちろん「自宅にあるので買わなくて大丈夫」という方もいるので、その分は通常顧客に行き渡ります。

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