OMO時代のリテールデジタル戦略 #01

ECがないと店舗の売上が減る時代。オムニチャネルとOMOの違い、理解していますか?

 

それで、オムニチャネルは実現できてきたのか?


 オムニチャネルというキーワードが浸透し始めた2014~2015年頃、「オムニチャネル担当」「オムニチャネル推進室」といった社内横断的な部署を新設したリテール企業が多く見受けられました。

 リアル店舗で用いられてきた販売管理システム、顧客管理システム、ポイントシステムなどと、EC(のそれ)とを連携・同期させ、在庫の一元化や顧客情報・販売情報、ポイントの一元化を実現しようとするオムニチャネル対応は、ここ数年でスタンダードになってきました。

 しかし、それらシステム連携を実現したからといって、それがオムニチャネル対応した成果に直結するとは限りませんし、リアル店舗とECとでその売上規模や収益性を競っている(場合によってはお客さまや在庫を取り合っている)状態のままだとしたら、オムニチャネルの実現はまだまだと言えるでしょう。

 ここにはオムニチャネル推進のハードル、ボトルネックとでも言うべき、次のような課題があります。
 
  • リアル店舗側の「リアル店頭のお客さまや在庫がECに持っていかれる」ことに対するアレルギー
  • リアル店舗側の「自分たちの接客活動の成果がECに横取りされる」ことに対するアレルギー
  • リアル店舗とECの部門間の壁

 リアル店舗もECも、そのときの都合に合わせて便利な方のチャネルを利用したいお客さまに対し、「リアル店舗~EC間の意識」がついていけない。

 地方のリアル店舗が販売代行やフランチャイズだったり、ECも運営代行に任せていたりと、ビジネス展開の形態上、こうしたアレルギーや壁の払拭がさらに難しい場合もあるでしょう。
 
著者制作

 「リアル店舗で売れてもECで売れても、(在庫の回転やキャッシュフローの面で)会社としてはどちらで売れてもいい」

 そうおっしゃる経営層の方も多いのですが、それをそのまま現場に伝えたところで浸透は難しく、成果の按分(あんぶん)や評価の仕方、どうしたら壁をなくせるかについて考える必要があります。

 ようは、システム連携以前の問題として、「ECを我がこととして捉えていないリアル店舗」、逆に「リアル店舗を我がこととして捉えていないEC」の両者の壁を取っ払うべく、社内やビジネス展開上の形態をオムニチャネル向きにしていくことが不可欠なんですね。

 この考えのもと、PARCOのEC「PARCO ONLINE STORE」は、それまでのブランド企業・テナント企業のEC事業部に出店・運営いただくECを止めて、2014~2015年にかけて「リアル店舗に出店いただいているテナント店頭が運営する、いわば店頭EC」への切り替えを行いました。

 「リアル店舗の力=テナント販売スタッフの接客力・情接発信力」を活かし、店頭にある在庫をECでも販売し、店頭の売上に計上する形です。リアル店舗が通常の店頭販売に加え、自身の成果となるECを併せ持つことで、オムニチャネル推進のハードルをクリアできないかと考えたわけです。

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