関西発・地方創生とマーケティング #20
「マネジメント層に大事なのは、どれだけ優秀な人材を知っているか」ダイキン工業 片山義丈氏
2020/06/15
「社外人脈が多い理由」は?
きっかけは数百人規模のマーケティング関係者が集う、カンファレンスに参加したことだそうです。そして、片山さんは、その場で登壇者に対して必ず質問をしたそうです。そうすれば登壇しているスピーカーからも、「ああこういう人がいるのだな」と認識してもらえるわけです。
これは、私も何度かカンファレンスに登壇させてもらっていますが、質問された方は今でも覚えていますし、その後もお付き合いが続いていたりします。
あとは、デジタルツールの発達の恩恵が大きいと言います。「Facebookなどでやりとりしていると、この人は何を考えているのか、どのくらい仕事が出来る人なのかが分かるし、何かあれば、誘ってもらえる」と。
いまでもマーケティング系の会合があれば、東京まで出張にいくそうです。そうすると「鹿毛さん(エステー)や音部さん(クー・マーケティング・カンパニー)のような素晴らしいマーケターに会えるし、それにとどまらずデータ、広告、マーケティングなど様々な分野の第一線で活躍されているプロフェッショナルな人たちの集まりに参加して、そこで会話することで学びや刺激を得ることができる」と。
「しゃべりが上手い理由」は?
片山さんは、トンチの効いたユーモアあふれるしゃべりで有名ですが、そうしたアウトプットのためには当然、インプットが必要です。これについては、真面目に経営・経済誌、全国紙をはじめ、マーケティング系のデジタルメディアの記事を出勤時などに読んでいるからとのこと。
例えば、音部さんの書籍『なぜ戦略で差がつくのか』は30回以上読んでいて、分からないことは本人に聞いて、理解を深めているそうです。
私も音部さんとは何度かお話させていただいていますが、「内容が難しくないですか(笑)」と聞くと、「そこは問題」と笑いながらも、「何がわからないのかが自分の中で整理ができてきちんと聞けば、とても頭のいい方だから、アホでもわかるように噛み砕いて教えてくれるものだ」と。
「分からないことは詳しい人に聞く。そこに人脈が効く。問題意識を持って手を動かしてやってみて、分からないポイントがはっきりして分かっている人の話を聞くと、よく分かる」と言います。
「デジタル」との上手な付き合い方
初代iPhoneが発売されたのが2007年。その数年後、私が近鉄の広告宣伝を担当していた時は、まだ「テラシンザツ(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)」が中心で、デジタルと言えば、お知らせ程度のWebサイトでした。当時、公式Facebookページを立ち上げる時に担当役員の説得に手間取ったことを思い出します。そんな世代と、いわゆるデジタルネイティヴのWeb担当の部下との付き合い方について伺いました。
「基本は任せること。ただし上司もデジタルを分かった上で、部下と接しなければいけない。少なくともデジタルには価値があり、可能性があるということは分かっていなければいけない。そして、細かいツールの使い方は理解していなくてもよくて、中途半端に古い知識で分かったふりをしたらダメ、分からないと言う方が良い。デジタルの世界は変化が激しいので、可能性を理解した上でできる人をアサインすることが大事だ」と言います。
次にデジタルについて、「部下がどの程度分かっているのか」をどう判断しているのかについて聞くと、上司自身が最低限は分かっている必要があるという前提で、優秀な外部のパートナーに「うちの担当どうですか」と聞くそうです。
では、「その優秀なパートナーはどうやって見つけるのか」と聞くと、ここでも「優秀なマーケターに聞く」という答え。さらに、その優秀なマーケターはどうやって見つけるのかと聞くと「各分野のすごい人に聞く」と数珠繋ぎだそうです。
「すごい人の飲み会には、すごい人が来ている。例えば、『マーケティングアジェンダ』に参加すると、夜のバーでマスター役をしている足立光さん(ナイアンティック)と飲める。しかも、始まる少し前に行けば、足立さんをタダで独占できる。若手がせっかくそんなチャンスがあるのに、そういう場に一番に行かないのはもったいなさすぎる」と語ります。
でも、初めて参加する人や、特に若手であれば、どうしても著名マーケターに対して気後れするものです。その点、片山さんは自信があるから、そこを乗り越えられるのでしょう、と聞くと。
「気後れするというのは比較する対象になっているということだが、三ツ星シェフクラスの著名マーケターは、そもそも次元が違うので比較対象として考えるのもおこがましいと思ったらいい。自分は基本的にそう思っているので最初から質問している。あほな質問でも今の自分の能力だし、高いお金を払ってカンファレンスに参加しているのだから元をとらないと。
しいて言えば、自分も大衆食堂の親父として、安かったり、質の悪い材料だったりでも、そこそこおいしい料理を安く早くつくる部分の経験があるので、次元は違うけれど、おいしい料理をつくるという同じ分野で頑張っているという自負はあるかもしれない」ということです。
これは同感ですね。何ができるかよりも、そのことについて誰ができるのかを知っていること。そして、その人にお願いできる関係性を築いていることが大事だと思います。