ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #27

米国水準が日本にも。ウォルマート、ホームデポが実施するBOPIS(店頭受取サービス)最前線

 

従業員用アプリも公開。店舗運営を誰もが体験!?


 ところで、ウォルマートのアプリにはSpark cityという従業員教育用アプリを一般公開して遊べるようにした店舗運営ゲームがあります。棚替え、商品補充、クレンリネス、接客といった店舗運営を通して、次の3つのKPIを向上することが目標のゲームです。
 
  1. 在庫管理指標の「OSCA(on shelf customer availability)」
  2. 顧客満足指標の「CFF(clean fast friendly)」
  3. 売上指標の「SALES」

 いかにウォルマートが在庫管理を重要視しているかが分かるでしょう。このアプリでは店頭在庫と倉庫在庫それぞれの数量を管理しています。倉庫から店頭に在庫補充する際には、ハンドヘルド端末で操作することで、倉庫の在庫が減算されるのです。

 このようなレベルで店内在庫が管理されていると、BOPISのオーダーが入った際に倉庫在庫を優先してピックアップすることが可能になります。お客さまのいない倉庫でのピックアップは、店頭在庫からよりも効率的に出来ます。BOPISのオーダーが多い店舗では倉庫をダークストアとして活用することも可能でしょう。

 当然のことながら、倉庫にも棚番、棚段マスター設定が必要です。
 
Spark cityアプリ: 上部インジケーターのOSCAが在庫管理の指標となっている

③ファーストステップ型

 前日閉店時の店在庫数からカテゴリまたはSKU毎に(当日店頭に確保したい量を)減算して、当日オンライン利用可能在庫とする方法です。

 現場、ほとんどの小売業での在庫更新は、このレベル(夜間バッチ更新)です。その中から、その日1日店頭では売れないと予測される数量をオンライン用に当てるという考え方で、店舗の対応負荷も比較的軽いと言いえます。

 ただし、一度設定して終わりでは、利用可能在庫が不十分であるためBOPISの売上が伸びません。オンライン注文の動向を見てSKU別に在庫を積み増したり、倉庫に必要在庫を持つことも必要になるので、店舗任せではなくBOPISを理解できている人がメンテナンスを行う必要があるでしょう。
 

3. 注文データを元に、最短のピックアップ作業指示をする仕組みをつくる


 店舗においてピックアップの効率が最も良いのは倉庫です。最初に倉庫設計を考える必要があります。作業に必要な通路幅、売れ筋を梱包場所に近づけるなど、ロジスティックのノウハウが必要です。

 次に倉庫および店舗レイアウトをもとに注文毎の作業動線を最短にするソフトウェアを開発する必要があります。
 
 最後に、ピックアップ時の消し込み作業(バーコードスキャンで注文データに作業済フラグをつける)を観察しながら、現場で使いやすいシステムをつくります。

 日本でもBOPISを支援するSaaSなどが出てきましたが、ほとんどがオーダー部分だけで、SKUが多いFMCGではそれだけでは店舗作業が破綻します。BOPISは今後、日本の小売業にとって重要になるテーマです。本気で取り組みたい方は、筆者にご連絡ください。一緒にあるべき姿を考えていきましょう。
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