ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #29

九州の雄コスモスは、首都圏ドラッグストアに勝てるのか

 

コスモス薬品が持つ3つの強み


 本拠地の九州を含め、複数のコスモス薬品の店舗を視察した筆者が感じているコスモス薬品の競合他社(ドラッグストア、スーパー…)と比較した強みは、次の3点です。
  1. 構成比50%を超える食品のPBを含めた品揃えと価格
  2. 商品マスター、棚番・棚段マスター整備
  3. 標準化された作業の徹底力

 「1.構成比50%を超える食品のPBを含めた品揃えと価格」は、ぜひ本来のフォーマットの店舗を見てください。食品PBの多くは著名メーカーや九州地場企業が製造しており、品質も高い商品です。
 
PB商品(ON365)の一部。通販サイトより。

 「2.商品マスター、棚番・棚段マスター整備」の重要性は、当連載の第26回BOPIS成功のために必要な3つの要素‐前編で記載した通りです。

 コスモス薬品の店頭プライスカードを見ると、商品名・規格がお客さま向けに整備されていることは当然として、商品を選ぶヒントとなる商品特徴が書かれています。

 また、プライスカードをよく見ると、棚管理されていることがわかります。陳列位置、フェイス数(Fで表現)が各商品で決められており、実際にその通り並んでいます。コスモス薬品の店舗は十数回視察していますが、どの店舗も必ずそうなっています。

 棚位置が本部で管理できていることを意味し、POS実績で調整する指示もできますし、全店舗のデータが集まることで、標準化された強い棚割りをつくることができます。本部が考えることに集中し店舗が実行に集中、そして出た結果に基づいて本部が、また検証することでPDCAを回すことができます。

 多くのチェーンストアでは、現場にも本部にもPDCAを任せて、結局回らないという話をよく聞きますが、プライスカードを見ただけでもコスモスがそうではないことがわかります。

 日本のドラッグストアでここまでできているのは、私の見た限りではコスモス薬品だけです。また、他のドラッグストアで進まない理由もわかりますが、ここでは解説しません。
 

マツキヨ、トモズに圧倒的な脅威になる


 「3.標準化された作業の徹底力」は、前述の棚管理ひとつをとっても実感できるものです。また、九州の店舗において医薬品売場で10秒程度迷っている素振りを見せると、必ずと言っていいほど、店員さんが声をかけてきます。そして、大丈夫ですと返すと、それ以上声をかけることはしません。おそらく、こうした接客も標準化されて徹底されているのだと考えます。

 上野毛店においては、まだ教育が浸透していないのか、「3.標準化された作業の徹底力」で述べた接客は見受けませんでしたが、他の強みはコンパクトな店でも実行されていました。

 近隣のトモズは調剤がありますが食品の扱いがなく、マツモトキヨシは調剤も食品もありますが、売場およびレジオペレーションにバラツキが多く見られました。いずれも化粧品の品揃えではコスモス薬品上野毛店に勝りますが、コスモスには充実した商品説明があります。

 両店舗にとって、圧倒的な驚異であることは間違いありません。
他の連載記事:
ニュースと体験から読み解くリテール未来像 の記事一覧

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録