OMO時代のリテールデジタル戦略 #04
買い物に幸福感を与える「セレンディピティ」は、コロナで失われたのか
Amazonにセレンディピティはあるのか
EC・デジタルの場でのセレンディピティについて考えてみましょう。皆さんも、SNSで繋がっている知人・友人の「投稿」や「シェア・いいね!」がきっかけで、「こんなブランドがあるんだ!」「この商品いいな!」という出会いがあったり、実際に買ったりした経験があると思います。
ECサイト上のレコメンドや関連商品から、当初買うつもりでなかった商品に出会うこともありますよね。クラウドファンディングで、まだ世に出ていない魅力的な商品や先進的な取り組みと出会えたりもする。EC・デジタルの場でも、セレンディピティは十分存在しています。
筆者はiPhoneのドック(画面一番下の固定のゾーン。一般的には頻繁に使うアプリを置く)に、Amazonアプリを配置しているくらいAmazonのヘビーユーザーですが、Amazonを完全にセレンディピティそのものだと思って利用しています。「いま買うべきものをAmazonで買う」だけではないんですよね。
「こういう商品があれば欲しいと思ったことがあったな」または「こういう不便を解消する商品があったらな」という、Amazonがなければ、たぶん買うきっかけがないであろう、自分でも半分忘れかけていたくらいの「欲しいと思ったことがあったな」「こういうものがあったらな」に対する欲求を掘り起こされています。
この感覚は、リアルの場・店頭でいうところの、「東急ハンズでのショッピング体験」に近い気がします。日頃から欲しい・買おうと探していたり、リサーチしているわけではないけれど、「こういう商品があれば、欲しいと思ったことがあったな」「こんな不便を解消する商品があったらな」というものを思いがけず発見し、「こんな便利なものがあるんだ!」「こんなこだわりグッズあるんだ!」と感動して、他にもそんな出会いがないか、時間の許す限り店内を見て回ってしまう“あの感覚”です。
そういうものに出会えて、そして買えたとき、文字通り「幸福感」を感じます。Amazonには利便性というより、そうしたセレンディピティに一番の価値を感じています。
また、Amazonに限らずですが、ECサイト上の「ユーザーレビュー」もセレンディピティのきっかけになり得ると思います。ユーザーレビューに関しては、「◯◯のECサイトのレビューは偽レビューやステマが多い。信用できない」などと言われることも多いですが、いち消費者としては「それは見抜いた上で、ユーザーレビューを参考にしている」と言いたいですね。
信用・参考にすべきでないレビューも多く存在するのは確かですが、本当に有益なレビューは、店頭での接客と同等か、それ以上に参考になる。そうした有益なレビューによってその商品の購入を決めたり、また有益なレビューが勧める“違う商品”を検討したりすることもあります。これも一つのEC・デジタルの場でのセレンディピティでしょう。