OMO時代のリテールデジタル戦略 #05

2020年代に突入。小売ビジネスは、システム偏重から「マーケティング重視」に変わる

前回の記事:
買い物に幸福感を与える「セレンディピティ」は、コロナで失われたのか
 

当たり前になった「OMO(Online Merges with Offline)」


 「OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)」という言葉が、リテール(小売)ビジネスの場でも自然と使われるようになってきました。生活者・消費者自身や、それを取り囲む環境が「OMO」という状態にあり、それに応じて必然的にリテール企業の活動も「OMO(対応)」してきているのだと感じます。皆さんの周りではどうでしょうか?

 以前に比べて、多くのリテール企業内でデジタルマーケティング業務に専門的に携わる部署・人が格段に増え、また、これまでオフラインを主戦場としてきた部署の業務の中にも、デジタルマーケティングの要素やオンラインに関連する部分が相当増えたと思います。

 そんな中で「OMOという状態・時代であること」「それにどう対応していくかが重要であること」が、だんだん共通認識になってきたのです。

 この数カ月、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」というキーワードも数多く耳にするようになりました。DXとは、平たく言えば「デジタルを活用することで、ビジネスモデルに変革を起こしたり、競争優位性を高めたりすること」。

 コロナ禍によってさらに加速する「OMOという状態・時代」を踏まえた考え方、または「OMOへの対応そのもの」であると言っていいと思います。


 

リテールにおけるデジタル「マーケティング」


 いま、リテールにおける「デジタルマーケティング」は、筆者の勝手な理解ですが、1990年代後半~2000年代頃から「HP(ホームページ)やEC、ネット広告を手探りでやってきた人たち」と、もっと以前から「マスを相手にしてきたガチな“マーケター”で、デジタルへシフト(またはデジタルを包含)してきた人たち」などをベースに発展し、ある程度、成熟した領域になっています。

 筆者は、前者の視点しか持っていないため、その視点で話を進めます。2010年くらいまでのリテールECの責任者・担当者は、リアル店舗の店長からEC店長になった人も多く、正直、マーケティングという観点はあまりなかったのでは、と思います。

 スマートフォンもSNSもまだない時代。文字通り、新しい販売チャネルであるEC店舗の“店長さん”。リテール企業内でオフラインからオンラインへシフトした、“はしり”の人たちと言えるでしょうか。

 ECやデジタルのHow Toも少なく、何をするにも手探りで、あれこれ理屈を考える前にやってみて学ぶ。しかし、機を見るに敏。店頭のノウハウやスピード感をECに持ち込んだ、良い意味で「商魂のある現場主義な人」が多かった気がします。



 ECコンサルタントと呼ばれる人たちがコンサルティングする内容も、この頃までは「モール内での競合他社との戦い方」「効果的なメルマガやLPのつくり方、ネット広告運用のHow To」そうした視点が主流だったように思います。

 そうしたEC店長たちが、マーケティングを意識し始めたのは、2013~2014年頃からの「オムニチャネル」がきっかけな気がします。

 検索とネット広告、メールという世界がSNSやスマートフォンアプリへと広がり、デジタルチャネルが形づくられる中、ECが「新しい販売チャネル」という限定的な役割から、その特性ゆえ「インターネットやスマートフォンを通じた、もっとも面の大きな顧客接点のひとつ」「顧客情報・販売情報をはじめ、顧客ニーズや顧客行動の把握・分析におけるデータベース」「企業全体のブランディングやマーケティング強化に向けたプラットフォーム」といった役割を求められ始めたのです。

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