OMO時代のリテールデジタル戦略 #05

2020年代に突入。小売ビジネスは、システム偏重から「マーケティング重視」に変わる

 

2010年代、ECは「システム偏重」だった


 ECは、もともと「専門的なもの」と位置づけられてきた傾向があります。

 「デジタルはよく分からない」、そう言う人が少なくないリテール企業の中で、たまたまデジタル適性があり、ECに携わる機会のあった人たちが初めての業務を通じて知識やノウハウを身に付け、多くのリテールの保守本流の事業とは別軸で、ある種独自の成長・進化を遂げてきた。そうしたケースも多いように見受けられます。

 そして2010年代、オムニチャネル戦略やデジタルシフトという旗印のもと、「顧客ニーズや顧客行動の把握・分析におけるデータベース」「企業全体のブランディングやマーケティングのプラットフォーム」を実現するため、その専門性はさらに高まったように思います。

 急速に進化するマーケティングツールやネット広告の運用手法、SNSやスマートフォンアプリなどの活用に向けた情報のキャッチアップも重要でしたし、何よりも基幹システムやポイントシステムなど、さまざまな外部システムとのデータ連携や、進化するインフラやデバイスへの対応といった点で、(自身でプログラムを組むわけではないにせよ)システムというものへの相応の知識・理解が求められました。

 ある意味、当時は「システム偏重」な方向だったと言っていいかもしれません。半年から1年以上にも及ぶ長期のプロジェクトを立て、壮大なRFP(提案依頼書)を書き、複雑なシステム構成を組み、ふんだんにカスタマイズを施し、大きな投資をかける。この頃、「あたなは、システム屋さんですか?」というくらいシステムに精通したEC担当者が多かった気がします。



 こうしたシステム偏重な方法も、システム群の全容把握の困難さ、保守やアップデートにかかるコストの高さ、さらなるアップデートやリプレイスにおけるリスクの大きさなどから、「どこまでをインハウスでやり続けるのか」「自前で車輪の再発明をし続けるのか」「今後も運用にシステムを合わせ続けるのか」、そして何より「結果として何を得られたのか」、それらをフラットに振り返り、見直すタイミングが来ているように感じます。

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