ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #32

日本版「Amazon Go」が続々都内にオープン、無人店舗は小売を変えるのか

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ワコール、FABRIC TOKYOが挑戦。新3DボディスキャンがZOZOと同じ末路を辿らない理由
 

無人店舗を実現している仕組みを解説


 Amazon Goに代表される、来店客の行動を各種センサーで分析し、商品バーコードスキャンが不要な「無人決済方式の店舗」が増えてきました。

 おそらく、体験した人の数が最も多いのは、JR東日本スタートアップとサインポストの合弁会社であるTOUCH TO GOが開発した、高輪ゲートウェイ駅構内に今年3月開店の「TOUCH TO GO」でしょう。

 その後、この店舗以外にも次々と都内に無人店舗が出店およびリニューアルしており、今回は私が訪店した印象を書いていきたいと思います。

 無人店舗の仕組みはどこも類似していますので、先に紹介しておきます。まず、天井に設置されたToFカメラとRGBカメラ、もしくはステレオカメラで来店客の行動を把握し、追跡します。

 ※ ToFカメラ(Time-of-Flight Camera):光の飛行時間を利用して三次元情報を計測可能なカメラ

 次に商品棚の重量センサーで、来店客がどの棚のどの商品を何個取ったのかという精度を補完します。後述しますが、精度の差は主に天井カメラで取得した情報量と蓄積量、その後の画像AI処理で決まります。

 決済は大きく分けて、アプリなどに登録したクレジットカードでの引き落としと、セルフレジでの支払いの2パターンです。
 

KINOKUNIYA Suttoは、利用ハードルが低い


 10月に目白駅改札外に出店した「KINOKUNIYA Sutto目白駅前店」は、冒頭で言及した高輪ゲートウェイ駅構内の無人コンビニ「TOUCH TO GO」と同じ仕組みを採用しています。

 高級スーパー「KINOKUNIYA」を運営する紀ノ國屋は、JR東日本の完全子会社であり、グループ間での協業ということでしょう。
 
※写真はいずれも筆者撮影

 プレスリリースには、「無人決済小型スーパーマーケットとして展開」と書かれています。顧客の立場で見ると約12坪・500SKU強で、高輪ゲートウェイ店と同様の品揃えの縮小版のため、「小型の無人決済コンビニ」という印象です。

 写真の天井を見ると分かるように、この面積に30台のToFカメラが設置され、来店客がひとりだけであれば、高い精度を出すことが可能です。ただし、通路幅が狭く人が交錯しやすい店舗設計のため、複数人が近くで棚に手を伸ばす状況ではカウントミスが多少発生します。知人から「購入商品が間違っていた」という体験報告がありましたが、それは複数人が近くにいるケースでした。

 決済に関しては、Suicaなどの交通系icカードと、クレジットカードが使用できるセルフレジで行います。アプリのダウンロードが不要なので、利用するハードルが低い点が特徴でしょう。小腹が空いた時に、さっと食品を買える店です。

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