ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #33
コロナ禍で進む、店舗のコワーキングスペース化。体験して見えてきた可能性
実店舗+シェアオフィスの可能性
紳士服専門店である「洋服の青山」がシェアオフィスを併設することは、「仕事着の販売に加えて、仕事場の提供」になり、ビジネスパーソンへのサービス提供におけるシナジーを期待してということになります。
紳士服の購買頻度は年1~2回でしょうから、そもそもの来店頻度は年数回です。シェアオフィス併設で既存客の来店頻度は上がりそうですが、スーツ購入は「消耗して着られなくなったら買う」という生活者が最も多いことを考慮すると、売れるのは低単価消耗品のシャツや靴下になりそうです。
そう考えると、シェアオフィスは既存客がドロップイン利用することでの年間購入金額の向上よりも、企業が年間契約することでの新規客獲得の効果の方が大きく期待できると考えます。会社が契約したシェアオフィスへの出退勤時にはスーツを利用しますし、重要な商談でネクタイを忘れたときは、その場で購入できるという利便性もあります。
では、これが紳士服店ではなく、別業態ではどうでしょうか。駐車場の大きなコンビニに併設して、ドロップイン専用の個室型シェアオフィスがあったら、かなり便利だと思います。JR東日本がしているステーションワークに似た形態です。シェアオフィスとして利便性が高く、コンビニで飲食物や充電ケーブル類を購入することで売上にも寄与しそうです。また、コロナ禍で閉鎖している店内のイートインスペースを切り替えても良さそうです。
コンビニ以外では、カフェとの相性も良さそうですし、収益で苦しむ居酒屋などでZOOM飲みができるスペースがあれば、安全安心な飲み会が実現できそうです。
移動車両にもシェアオフィス?
私自身がステーションワークを5回ほど使った感想として、スペースは必要十分ですがWifiがやや不安定なのと、設置場所によっては外部の音がうるさく感じました。なお、2020年11月27、28日の2日間だけ、両国駅に停車している成田エクスプレス車両をシェアオフィスにする実験にも参加してみました。
グリーン車にしか電源がないということもあり、実用性に疑問はありましたが、近い将来新幹線や成田エクスプレスの一部車両にシェアオフィスが併設される時代も来るかもしれません。
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