ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #34
環境省のオープンデータを、小売業はどう活用できるのか
環境省の持つデータを小売業に活かせるとしたら
まず思いつくのは、用途が明確なものです。「環境省熱中症予防情報サイト」のデータと連携して、店頭で夏場に最適なタイミングで「熱中症の注意喚起とその関連商品・サービスの訴求」は、多くの小売業で可能でしょう。
次に、「大気汚染物質広域監視システム」のリアルタイムデータとの連携です。店頭にサイネージを置くことで、リアルタイムに動向を伝えることが容易にできます。花粉や黄砂、PM2.5などその地域における動向がマスクコーナーなどで紹介されると、関心を引くと考えられます。
小売業に限らずですが、診療所・クリニック、保険調剤薬局など医療提供施設の待合室で、診療科に合わせた情報を出し分けて表示することは、芸能ゴシップばかりのテレビを置いておくよりも有益だと思います。
気温、風向きなども商品の発注や販売に使い道がありそうですが、こういう用途であれば、国土交通省の気象庁データがより適応するでしょう。省庁で同様のデータを取得しているという課題もあるそうですが、APIでデータを要求し、受け渡す形式だけ各省庁で標準化していれば、利用サイドとしては問題ありません。
体感や気温を元にして店内のエアコンを最適化することは、壁紙やリモコンに「夏場は28度!冬場は18度!省エネ留意!」など機能しない貼紙をするよりも、来店客・従業員が快適で、総合的な省エネルギー効果も大きくなります。
一見活用が難しそうな「産業廃棄物行政情報システム」を取り上げたのは、事業用ゴミ処理についてです。小売業や飲食業チェーンの本部では、新規出店があるたびに、産業廃棄物処理業者を手配します。
過去に出店したことがあるエリアであれば簡単ですが、新規エリアへの出店では悩ましい業務です。歴史的経緯から反社会的勢力が関与する産業廃棄物処理業者も存在しますし、処理価格とコンプライアンスも様々です。
「複数業者から相見積もりをとって安い方を…」という安易な手法を取ると、後々大きな問題になるリスクがあります。信頼できる業者を選定するために、公正性、透明性を少しでも担保できるデータを提供してもらえると助かるのです。
PDFよりもCSV、CSVよりもAPI公開を
省庁で公開されているデータは、現時点ではテキストやPDFが主です。単発の分析に使うのであれば、テキストやPDF、またはCSVをダウンロードして加工することも可能です。
しかし、せっかく全国に設置されたIoT機器と連携し、リアルタイムに近い形で生データが取得しているのであれば、小売業としては、それを活用して「今どうなっているか?」「今後はどうなりそうか?」といった情報に加工したいところです。そのためには、APIの公開まで実施して欲しいと考えています。
※API(Application Programming Interface):各種システムやサービスを利用するアプリケーションソフトウェア (Application) を開発・プログラミング (Programming) するためのインターフェース (Interface)。この場合、環境省の所持する各種データを利用するアプリケーションを民間が開発するためのインターフェースとなる。
今回の議論を通じて、環境省のデータには、多くの可能性があることがわかりました。今後も注目していきたいと思っています。
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