関西発・地方創生とマーケティング #28
えとじや 岡本晋介さんとの雑談から考えた「顧客中心の戦略設計」とは?
顧客マインドにあわせた商品提案の極意
3つ目は、「顧客マインドでの商品提案」についての話です。これは、以前、私が担当していたテーマパーク「志摩スペイン村」について話が及んだ時のこと。「年間約1000万人が訪れる三重県の伊勢神宮の参拝者を、そこから1時間で行ける年間入園者100万人の志摩スペイン村に呼び込めるんじゃないか」という私の考えを、岡本さんの友人でもあるクー・マーケティング・カンパニーの音部さん(当時は資生堂のマーケティング責任者)と、ジョンソン・エンド・ジョンソンの方にしたら、瞬時にお二人から「それはない!」と突っ込まれたというエピソードです。
そのことを岡本さんにお話したのですが、岡本さんにも「まあ、そうでしょうね」と頷かれてしまいました。
そこで、そう思った理由は何でしょうか、と聞いたところ、納得の回答が返ってきました。
例として挙げるのは、スーパーの棚割りです。いわゆる近いもの同士を並べると相乗効果で売上が伸びるけど、遠いもの同士は逆に売上を下げてしまうということです。
最近ではお肉の横に鍋のスープ、野菜などが並べて売られるのも一般的になってきていて、各商品の売上も相乗効果で上がっているようですが、以前はそれぞれを決まった棚で売ることが当たり前とされていました。
これは流通の責任分担の問題で、お肉、スープ、野菜はそれぞれのバイヤーがいて、それぞれ別の問屋から仕入れてくることもあり、それぞれが責任を持つ棚にしか商品を並べることが出来ないという商習慣・慣習があったからだそうです。
しかし、最近は流通上のカテゴリー分けの垣根を超えて、顧客のマインド・気持ちのための陳列・提案という発想ができるようになってきました。
一方、消費財においては、メーカーは自社のブランドの商品をまとめて並べたがります。
例えば、シャンプーやリンスとスタイリング剤や整髪料がそろっているブランドだと、それらを並べて売ろうとします。しかし、それは逆効果でかえって売上が下がってしまうのです。
なぜかと言えば、夜にお風呂場で使うものと、朝に身支度のために洗面所で使うものは、消費者の頭の中では別のものとして捉えられているため、一緒に並んでいると購入時に混乱を起こすからなんだそうです。
さて、話を戻します。
伊勢神宮への参拝という神聖でおごそかな行為は、少なくとも姿勢を正す行為であって、テーマパークで遊ぶという行為とは、マインド・気持ちが、全く違うでしょうと。
すなわち、カテゴリーとして近いものではなく遠いものだから、地理的に近くにあるからと言って、二つは結び付きにくい。売り手が無理に結びつけようとすると、かえって意欲を下げてしまうことになりかねませんよ、と。
それでも、志摩スペイン村へ来られる方は、結構な割合で伊勢神宮も参拝されるという事実もあるので、個人的にはまだ諦めてはいないのですが(笑)。