次のECの鍵は「Cross Dimension」にある #02
消費者の「偶然の意思決定」を、ECサイトはどう捉えるべきか【ディノス・セシール 石川森生】
2018/07/17
- オムニチャネル,
- 通信販売,
- EC,
- ダイレクトマーケティング,
「Cross Dimension」とは何か?
2回目の寄稿を前に、対応しなければいけない他の仕事に頭の一部を占領されながら、何はともあれ、最初に片付けるべき洗い物を食洗機に突っ込む。ソファに体を埋めPCを開き、キッチンで夕飯のカレーの汚れを健気に落とす食洗機の音を聞きながら、おかげで寝る時間が20分延びたと心の中で感謝する。前回のイントロで仰々しく登場させた「Cross Dimension」という言葉。オムニチャネルやOMO(Online Merges Offline)の流れを受け、それでも「もっと買い物って自由なんじゃないの?」という考えのもと、デジタルとアナログ、リアルとWEBのクロスだけでなく、業種業態や業界、過去と未来といった時間軸も含め、全てのナレッジを結びつけた、新しい顧客価値の創造が重要であることを指し示している。
この場合、サービス提供者として、企業はできるだけ多くのDimensionを持っている方が有利である。生活者とのタッチポイント、取り扱う商品・サービス、生活者から見えるコンテンツ、それ以外にも良きアライアンス先や歴史の中で培ってきた様々な資産がそれにあたる。
ただし、そうして一見バラバラに思えるDimensionをひとつのストーリーとして組み合わせ、常に新しい顧客価値を生み出すための具体的な方法論に課題がある。その解決には、テクノロジーを駆使した「Modernization(現代化)」が有効な一手となりうる。
一方で、多くのDimensionを有する企業は、それらを簡単にはCrossさせられない事情もある。組織や制度、慣行、ルーチンといった、それまでの連続した成長を支えてきた仕組みがそれに当たる。この点は、次回以降に書いてみたい。
消費行動モデルで説明できない点に「真実」がある
さて、広がりすぎた話を、ECを軸に畳んでいこう。そもそも、ECサイトに期待される役割は何だろうか?
- 検索対応(探しているものが見つかる)
- コンテンツ提供(購入に必要な情報や、比較のための情報を得る)
- 決済機能(いつでもどこでも購入できる)
その答えは、ECを生活者の消費プロセスのどこに置くかによって変わる。
消費行動のモデルは、マスメディア時代の「AIDMA」、インターネット時代の「AISAS」、コンテンツマーケティング時代の「DECAX」といった変遷があり、時代とともに消費者の行動様式が変化していることを、今に伝えてくれる。
それらを正しく捉えることは、戦術を決定する上で有意義である。また、購買行動について考える際に、同じく語られる「MOT(Moment of Truth = 真実の瞬間)」も、ECの役割を考える上で参考になる。
しかしながら最近、これらのモデルで説明されていない点にこそ、生活者の消費行動に関する重要な要素があると、やや訝るような心持ちになっている。というのも、直近における私の生活必需品以外の買い物は、企業による恣意的な働きかけではなく、偶然をきっかけに起きているからである。