関西発・地方創生とマーケティング #29前編

「前向きなバカが勝つ」ホームセンター業界注目のDIY FACTORY山田岳人さんがリクルートで学んだこと

前回の記事:
えとじや 岡本晋介さんとの雑談から考えた「顧客中心の戦略設計」とは?
 コロナ禍で外出を控えるようになって、ECサイトで買い物をすることが増えたという方も多いのではないでしょうか。また、自宅にいる時間が増えて、できるだけ快適に過ごしたいと、DIY(Do It Yourself・日曜大工)をはじめた方もいらっしゃるかもしれません。 
 
今回は、DIYに必要な工具や塗料、ガーデニング用品を販売する通販サイト「DIY FACTORY」を運営する大都 CEOの山田岳人さんにお話を伺いました。
 
大都は、もともとは大阪に本社を持つ工具の卸問屋でしたが、2002年にいち早く工具のEC事業をスタートし、外部のE Cサイトにも出店して急成長。その後もDIYの流れに着目し、コロナ禍の2020年には「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」の「ガーデン・DIYジャンル」の大賞にも輝いています。また、ホームセンター業界のトップを走るカインズの依頼を受けて同社の店舗をプロデュースし、出資も受けている注目企業です。

私は2020年7月にテレビ東京「カンブリア宮殿」に山田さんが出演されているのを拝見し、面白いキャリアの方だなと思い、たまたま同社のオフィスが私の職場の近くだということもあって、直接お伺いしました。
山田岳人氏 大都 CEO
 

就職選考なしでリクルートへ

 山田さんは、学生時代にリクルートでアルバイトをしていて、当時の営業成績が、社員を含めてもトップだったそうです。そして3年生の時にリクルートの人事に「自分を採用しないか」と直接持ちかけました。そうすれば会社としても採用コストをかけずに、営業実績がある社員を確実に採用することができる、と。そして、当時の上司の口添えもあり、見事内定を勝ち取りました。
 
 ところが、山田さんは卒業に必要な単位がギリギリで、4年生の時に授業を全コマ分エントリーして、すべて単位を取らないと卒業ができない状態になります。しばらくアルバイトを休んで必死に勉強し、ようやく卒業の見込みが立ちました。そして安心して卒業旅行で海外へ出かけたところ、家族から連絡が入ります。1単位落として卒業できなくなった、と。
 
 急いで帰国して、学校に行きます。すると、今年度は卒業できないけれど、たまたま来年度から制度が変わり、卒業に必要な単位数が減ることになった、と。そのお陰で4月1日に卒業し、同日リクルートへ入社します。
 
 「運が良い」と言ってしまえばそれまでですが、ギリギリの状況からできる限りのことをして臨んだからこそ、つかめた「運」だと言えるのではないでしょうか。
 

前向きなバカが勝つ理由とは

 「どうすれば、トップ営業になれるのか」、山田さんに聞きました。
 
 リクルートでは、新入社員研修で「名刺獲得キャンペーン」があったそうです。ルールは、シンプルで「いかに多くの名刺を集めることができるか」を競うというものです。
 
 「ビル倒し」と言うそうですが、ビルの上から下まで片っ端から飛び込み営業をかける。なかには灰皿が飛んでくるようなところもあったそうですが、とにかく躊躇(ちゅうちょ)したら負けだと必死になったそうです。
 
 東大卒の同期は、今後のビジネスにつながらない「意味のない名刺」をもらっても仕方がないと、企業名や役職を重視して集めてくる。
 
 しかし、ルールは1枚でも多く集めること。スナックのママの名刺も同じ1枚に数えられます。でも、彼らにはそれが分からない。「社会に出たら学歴は関係ないな」と、その時に思ったそうです。

 ようは、振り切れるかどうか。「前向きなバカ」が昔のリクルートの採用コンセプトだったそうで、これこそが大事なのだと語ります
 
 当時のリクルートは漆黒と言われるほどのブラック企業だったと、山田さんは振り返ります。フロムエー担当として、夜遅くまで開いている飲食店への営業もあって、文字通り朝から晩まで働き詰めでした。上司からも「仕事に失敗して何を失うのか、恥ずかしいと思うのはお前の問題だ」と言われ、「なるほど、失うものは無いのだ」と気づいたそうです。

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