関西発・地方創生とマーケティング #29後編

ホームセンター業界からの視察が絶えないDIY FACTORY山田岳人氏が語る、「マーケティングとは、幸せの量を増やすこと」

 

マーケティングとは、幸せの量を増やすこと

 ターゲットは、DIYビギナー。いままでDIYを体験したことのない人がひとりでも増えたら市場は広がるはずだと。体験型店舗をどうやって知ってもらうか、まずは若い人が足を運びたくなるお店づくりと、そしてDIYが決して単なる作業ではなく「カッコいいもの」だと情報発信することを意識していたそうです。
 
 結果は、来店客の7割が女性で、特に30代が多かったそうです。
 
 まず初めに、大阪の難波に出店しました。ただ、関西ローカルメディアの取材は来るものの、わざわざ東京から取材は来ません。そこで翌年、二子玉川に出店したところ、芸能人がプライベートで訪れて自身のSNSに投稿すると、テレビや雑誌などの取材が増えて、それを見て知った全国ほぼすべてのホームセンターから視察が来たそうです。

 そして今では、DIYと検索するとDIY FACTROYのサイトが上位表示されるほどに認知を獲得しており、今ではリアル店舗はその役目を終えています。
 

 
店舗の外観
 マーケティングについて山田氏は、一般的には「どうやって買ってもらうのか」ということを考えるものだけど、自分はその先を見ていて、相手の「幸せの量を増やすこと」だと考えていると言います。
 
 ドリルの穴理論で有名なレビット博士いわく、ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴。山田さんいわく、ペンキを買いに来た人が欲しいのはペンキではなく、ペンキを塗ることによって子ども部屋をかわいらしくしたい、そうすることによって家族の幸せの量が増える。そのために必要なのが、ペンキなのだというのです。
 
 幸せの量を増やすことができれば、おのずと売上につながるという考え方ですね。
 

ゆずらない、すべて自前主義の考え

  DIY と検索すると上位表示されるDIY FACTROYのサイト(https://www.diyfactory.jp/)ですが、これはもちろん、Googleがどんなコンテンツを評価するかを把握して、それに対応するなどきっちりとSEO対策をしているから。そしてそれらはすべて外注することなく自前でやっているそうです。
 
 現在の社員数は約30人。どのようにマネジメントしているのか伺いました。
 
 2009年に中国にデータセンターをつくる際、たまたま知り合った3人と飲み友だちとして付き合いが続いていたそうですが、2016年に時を同じくして3人が大都に役員としてジョインします。
 
 それぞれITやファイナンス、物流のプロだったことから、自社サイトを構築し、カインズとの提携やベンチャーキャピタルからの出資、そして物流の構築も進めることができたそうです。
 
 アジェンダノートの人気執筆者であるスクロール360常務取締役の高山隆司さんとも親しくされているようです。
 
 それにしても何か話がうま過ぎるように思うのですが、それぞれ個人のタイミングが、たまたま合っただけだと言います。でも山田さん自身に何か人が集まる引力のようなものがあるんじゃないかと思ってしまいます。
 

強みはレジリエンス

 そこで、山田さんの考えるご自身の強みについて伺うと、「ポジティブ」、「悩まない」、「寝たら忘れる」ことだと言います。
 
 リクルート時代、トラブルやクレームなどが発生した時、上司から「いま悩んでいることは1年経っても悩むことなのか。1年後に忘れていることならいま悩む必要はない」と言われてから、大抵のことは大したことないな、と思うようになったのだそうです。
 
 以前、お会いになった荒木香織さん(ラグビーワールドカップ2015イングランド大会で、日本代表が南アフリカ代表に勝利した時、当時のエディ・ジョーンズヘッドコーチに請われてメンタルコーチを務めた方)から、レジリエンスという、逆境に打ち勝つ個人の能力は鍛えることができるという話を聞いたそうですが、まさに自分の強みはそれだと仰います。

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