ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #37

なぜコンビニに猫草!?「1次商圏重視」店舗は、場に合わせることが重要【場に合わせる店、場を作る店②】

 

商圏とは、何か? 基本的な定義を振り返る


 小売業や外食業の店舗などに、お客さまが来店する可能性のある地域的な広がりのことを「商圏」と言います。

 商圏は距離のほかに交通機関、道路の状況、河川、山などの地理的条件、競合状況など様々な要素が影響しますが、単純な距離による距離商圏で分けると、次の3つになります。
 
1次商圏:徒歩で10~15分程度(年代による)のほぼ毎日来店可能な範囲。
2次商圏:自転車で10~15分程度の週単位で来店する範囲。
3次商圏:電車や車で30~40分程度の月単位で来店する範囲。

 都市中心部や過疎地のような極端な地域を除外したとき、アパレルや家電量販店であれば、3次商圏で、食品構成比が高くないタイプのドラッグストアであれば、2次商圏で出店を考慮します。

 日本フランチャイズチェーン協会のコンビニエンスストア統計調査月報(2021年4月度)によると、5万5868店舗で月間12億9728万1000人が来店(レジ通過)しています。1店舗1日の客数にすると774人です。同様に客単価は680円ですので、日販56万円が平均的なコンビニエンスストアの店舗ということになります。

 コンビニエンスストアの場合は1次商圏で出店を考慮し、半径500m以内に3000人以上の昼間または夜間人口があり、競合が周囲にいなければ、出店可能と判断して店舗を増やしてきました。商圏人口3000人のうち1/4以上が、毎日来店すれば成立するビジネスモデルといえます。

 しかしながら、各社が積極的に出店を続けた結果、過半数のコンビニエンスストアで、徒歩5分の350m以内に他の店舗があるという状況で、新規出店が非常に困難になりました。現在は商圏人口3000人を切る店舗が多くなっています。

 参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52545100T21C19A1MM8000/
 
 ただでさえ人口減少を続ける日本では、商圏内で新規顧客を獲得することが難しくなり続けます。ではどうしたら良いでしょうか?
 

場に合わせるコンビニエンスストア


 小売業の中でも、特に商圏の狭いコンビニエンスストアにおいては、商圏内人口減少への対応が不可欠です。そのためには、既存顧客もしくは潜在顧客のニーズを把握して、日常使いの店舗としての価値を高める必要があります。

 マーケティングと言うと、自分たちの売っている商品の価値をアピールすることと考えられがちですが、自分たちのことを知ってもらう前に、顧客のことを良く知る必要があります

 自分の店舗周囲にいるお客さまのニーズは、各地域で異なります。また、そのニーズは常に変化し続けています。各地域で異なるニーズに対して本部が決めた画一的な品揃えだけで対応することはできません。お客さまが必要な商品を必要なときに提供できる体制をつくり、お客さまのニーズを商売の中に取り込んでいくことが小商圏型の小売業にとっては欠かせません。

 商圏が狭ければ狭いほど、「場に合わせる店」が生き残れるのではないかと、筆者は考えます。
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