関西発・地方創生とマーケティング #30後編

「BOTANIST」などヒット商品を連発するI-ne、ブレない理念と強みとは?

前回の記事:
営業利益115.3%増、「BOTANIST」を軸に業績を伸ばすビューティーテックカンパニーI-neはどのように成長したのか
 コロナ禍で業績が低迷している企業が多い中、おしゃれなパッケージのシャンプー「BOTANIST(ボタニスト)」などのビューティー商品で有名なI-neは、2020年度の売上と利益を、ともに大きく伸ばしています。

 I-neは、2007年3月に設立されたビューティーテックカンパニーで、「世界中の人を自社の商品を通じて幸せにする、Chain of Happiness」というミッションを掲げ、生活者のライフスタイルを豊かにすることを基軸に、現在は飲料や美容家電なども加え19ブランドを展開しています。

 後編では、同社 取締役の伊藤翔哉氏に、EC市場参入の経緯、マーケティング手法、ビューティーテックの将来などのお話を伺いました(前編はこちら)。
          

EC参入時代はブルーオーシャンだった

          
 みなさんが普段使っているシャンプーの値段は、いくらでしょうか? また、自分でシャンプーを購入していますか? 中高年の男性はあまり意識しない方が多いようですが、ECやバラエティショップ(LOFTやPLAZAなど)で価格を比較すると、1,400円という値段は実はそこまで高くありません。もちろん、ドラッグストアと比較すれば「高い!」と言われますが。
 
 「BOTANIST」が発売された6年前は、ECでシャンプーを販売しているブランドはほとんどなく、「ブルーオーシャンだった」と伊藤氏は言います。アンファーのスカルプDなど対面では購入しにくいデリケート商品はオンラインで販売されていましたが、女性向けシャンプーでECに力を入れている企業はほとんどなかったそうです。
 
 だからと言って、成功すると直感的に思ったわけでもないと。健康食品やスキンケア、家電はすでにECで多く販売されているのに、「なぜシャンプーは無いのか?」と素朴に思い、ECモールの担当者に聞いてみたところ、「シャンプーで売り上げを作るのは難しい」という反応だったことを今でも覚えているそうです。でも、その売れない理由については、誰も明確な答えを持っていなかったと振り返ります。
        
ECサイト
        

失敗する理由が見つからないから挑戦する

        
 それでも、ECで勝負に出たのは、シャンプーやトリートメントは頻繁に購入するものの、持って帰るにはそれなりに重いので、ECならそこは解決できるし、パッケージデザインはLPで映えるようにして、口コミを増やして生活者の生の声をきちんと伝えることが出来れば、どう考えてもECで売れない理由が見つからない、と考えたからだそうです。
 
 そこでECからスタートし、次にLOFTやPLAZAといった、高価格でも受け入れられるオフライン店舗へと広げていきます。そしてある程度、認知され、リピートが増えてきてから、販路をドラッグストアに広げたと言います。すると、急激に売上が伸びて、いまではドラッグストアのシェアが一番なのだそうです。
 
 これは、はじめから狙ったことではなく、ある程度予測していたものの、それ以上に効果があったと。ターゲットを絞ると、しっかりと獲得できる層があって、そこから他の世代に拡大していくという良い例ですね。
            
botanist insta
         
 また、こだわりを持ちすぎない、自分たちの考えたことだけが「正解」という思考をやめているのだそうです。ヒット商品が生まれたからとあぐらをかくのではなく、商品開発もマーケティングも経験がなかったからこそ、自社のミッションを実現するために多くの意見を吸収し、I-neなりの答えを見つけていこうというカルチャーが根づいたのだと言います。これは、創業時からの、代表の大西洋平さんのスタンスであり、それが社員に浸透しているのだそうです。
 
 売れているという事実ではなく、今後の課題を先に見つけ対策を打てるようにする、競合がテレビCMに投資した時でも、細かな施策をコツコツと実施し、棚割りなどもAのドラッグストアにはどんな対応がいいかなど、個別に検討する。またお店ごとにリピート率を上げるための打ち出し方やコピーのアドバイスなどを着実に実施することで、常にドラッグストアの棚をキープし続けているのだそうです。

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