関西発・地方創生とマーケティング #31前編

古い日本家屋を人気ホテルに。リソースをデジタルで繋いで地方を活性化 NOTE代表 藤原岳史

 

生まれ育った故郷を活性化させる仕組みづくり


 もちろんデジタルを使って技術的にはクリア出来ても、実際にはビジネスとして成立させるための仕組みがないといけません。何のために、何をどう使うのかを明確にする必要があります。

 藤原さんはまず、土地の人に話を聞くことからはじめました。すると、皆さんその土地の文化のひとつである「昔からある建物」を残したいという思いを持っていることを知ります。

 
土地の人

 年に何度か篠山に帰る度に「あそこの店が閉まった」とか「どこの家の跡継ぎがいなくなって廃屋になった」など、寂しくなるばかりの状況を目の当たりにして、自分が故郷に対してできることは、昔からある建物を残すことなのではないかという思いを強くします。

 古い建物の所有者の多くは、その維持や撤去に費用が掛かるので放置してしまうケースが多く、結果的に廃屋になることがあります。でも、当たり前ですが、みな自分が生まれ育った建物は残したいと思っているのです。

 それを解決するための仕組みを藤原さんは考えました。基本的には建物の所有者からNOTEがマスターリースして投資、改修し、それを事業者にサブリースする。さらに地域や所有者の状況に応じて使い分けられるよう、SPCの組成、自治体の寄付制度の活用など、計6つにもおよぶ事業スキームを構築しています。
そして空き家だった建物を宿泊施設や個性豊かな飲食店、ショップなどに変え、その結果、町を行き交う人が増えて、周りの店も含め、地域が元気になるという仕組みです。

 「NIPPONIA」事業で開発する宿泊施設は、空き家になった建物を1棟ずつ改修し、複数の客室が町中に点在する分散型のホテルです。宿泊者は一旦、フロントのある棟でチェックインをしてから、町中に散らばる宿泊棟へ向かいます。途中、街のお土産屋で焼き栗を買ったり、名物の黒豆パンを買ったり。そうして地域に滞在しながら、回遊する楽しさをつくり出しているのです。
 
街並み、お店

 日本では、このような空き家の利用をはじめとする地域の活性化は、NPOやボランティアに委ねられることが多いのですが、「海外のように、資金調達をはじめ、きちんとビジネスとして成立させないと続かない」と藤原さんは言います。そして、この仕組みを運営しているのが「NOTE」です。

 「日本の人口減少は世界に類を見ないもの。まだ誰も経験したことがなく、その解決方法を知らない。だから日本が世界に先んじて、何をすれば、どうなるのかを新しく書き記していく。たとえ100%完璧ではなくても、そうすることによって次の世代が新しいソリューションで繋いでくれるはずだ」と言います。

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