ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #41

急増する体験型店舗。b8taの挑戦から見えてくる必ず押さえるべきポイント

     

b8ta日本3店舗目「渋谷店」を訪問


 b8ta渋谷店は、有楽町、新宿にあるb8taの店舗以上に人通りの多い場所にあります。入店すると、すぐに日産自動車の電気自動車「ARIYA」の展示が目を引きますが、これ自体はカーディーラーでの設置と何ら変わらないので、渋谷の一等地を部分貸しするというビジネスに見えます。
       

      
 筆者が渋谷店での新たな試みとして注目したポイントは4つあります。

 1.店舗前の半径約15mの人の流れを把握する3D LiDARセンサーを設置した。通行者の時間帯変化や入店率、入り口付近で展示する商品を見た推定人数など、店内の分析データと合わせてさまざまなデータを取得・活用していく。

 2.五感に訴えかける体験として、水回りを用意してカフェスペースを新設するとともに、試食を可能にした。それと連動して食品の取り扱いを拡充。カフェスペースでは、時間帯やイベントに応じて照明の色を変えることができる。いずれ時間限定バーなども行うかもしれません。

 3.什器類の可動化によるフレキシブルな陳列変更ができるようになっている。

 4.新開発のアプリを提供している。

 この中で筆者が特に注目するのは、3と4です。渋谷店の壁面陳列は従来のb8ta同様で商品とタブレットが置かれて、天井のカメラにより顧客行動の分析が行われています。

 しかし、中置き什器で陳列するエリアは、什器を可動型にしたことでコンセントを大量に配置することが困難です。結果として、このエリアにおいては、商品説明のタブレットがありません。

 また、什器位置が変わるということは、移動のたびに天井のカメラを再設定しないと顧客行動を正確に測定できないということにもなります。したがって、このエリアでは顧客行動分析もされていません(一部はされているかもしれませんが、通常エリアよりもデータは不足するはずです)。
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 しかしながら、渋谷店での商品体験は決して有楽町店や新宿店に劣るものではありません。理由は2つあり、ひとつはb8taスタッフの心地良い接客があり、その場で興味がある商品の疑問にすぐに答えてくれるからです。

 もうひとつは、新しいアプリの存在です。タブレットがなくてもアプリからQ Rコードを読み込むことで必要な情報が分かりますし、体験した商品に関するアンケートに答えると、アプリ内でスタンプが貯まります。スタンプは店内で利用可能なクーポンなどに交換できます。アプリのダウンロード、QRコードのスキャン、アンケート回答という手間に対するインセンティブです。
      

      

 ここで肝心なのは、アンケート内容は出品企業によって変更でき、企業側に充実したフィードバックを提供している点です。出品者と体験者を繋ぐプラットフォームとなっているのです。

 タブレットがなくなることで、副次的に面積あたりの出品数を増やすことにも成功しています。地価の高い一等地にマッチした手法だと考えます。

 b8ta渋谷店は、「理想的な形で商品を来店客に体験してもらう」ために従来通りの接客を重視しつつ、出品者に体験の結果をより多くフィードバックするという挑戦をしている店舗と言えるでしょう。
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