関西発・地方創生とマーケティング #34後編

マーケティングでもキャリアでも、大切なのはポジショニング【BICP 代表 菅恭一】

 

なぜ素晴らしいクライアントに恵まれるのか


 前述の通り、ある意味、菅さんは権威のある立ち位置ではないにも関わらず、ネスレ日本さんやサンスターさんなど素晴らしいクライアントをお持ちです。確かに同社がクライアントだと聞くと、依頼してみようと思いますよね。でも、それ以前はどうしていたのでしょう。

 クライアントに共通するのは、戦略を立てるところからパートナー企業に丸投げするのではなく、ある程度、自社で考えたい意向はあるけど、顧客目線で頭の中を整理するのに体系立てた手助けが欲しい、他にもやることが多くて時間がない、会社にマーケティング思考を根付かせたいけど一人ではできないといった、自分たちの社内で戦略を描ききることを理想としながらも現実とのギャップで課題が明らかになっている企業だということ。ご本人も不思議だと言いながら、どうも話をしているうちに、ああこの人になら、この会社になら依頼しようと思ってもらえるようだと。

 私がこれを聞いて思ったのは、クライアントのレベルも高くないと、そういう判断は出来ないだろうということです。素晴らしいクライアントに恵まれるのは、ある意味必然なのかもしれません。
2022年1月に実施した神戸合宿での写真。

菅さんにとって、マーケティングとは


 ずっと淡々と話していた菅さんが、最後になって少し熱く語り出したことを、お伝えします。

 「世の中には、物理的、そして価値観としてのマジョリティとマイノリティがあるけど、大衆化されている新しいものごとは全てマイノリティから始まるのだと思う。自分自身や会社の立ち位置やプレゼンの仕方などで、他との違いをつくること、つまりポジショニングが大事になる。

 例えば、広告も確かに届ける対象はマスだったとしても、まだみんなが気づいていない、あるいはまだない新しい価値観を提案することで、それが日常化して新しい大衆になる。つまりマイノリティからマジョリティを生み出すということ。本来、広告にはそういう力がある。そんな風に世の中の価値観を変えることができると痛快だし、とても面白い。マーケティングとはそういう仕事だと思っている。

 マーケティングの定義について聞かれると、『価値交換の仕組みづくり』と答えるけど、ようは実業、つまり事業そのものなんだと思う。今回の能川さんからのインタビューに答えながら、改めて自分は、自分と会社のマーケティングをしているんだなと思った。そして、自分自身でも実際に体験しているからよく分かるんだけど、そのために一番大事なのは、やっぱりポジショニングの切り方なんですよ」

 取材中、何度も出てきたのが「マイノリティ」と「ポジショニング」という言葉でした。印象的だったのは、まだない価値観を提案して、それが日常になっていく、つまりマイノリティからマジョリティを生み出すという話です。そして、そのために大事なのがポジショニングだということ。

 戦うべきポジションにおける価値をきちんと定義すること。改めて意識したいと思いました。
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