次のECの鍵は「Cross Dimension」にある #03
カタログ通販ビジネス 再浮上の鍵は、スタートアップの成功法則にある【ディノス・セシール 石川森生】
2018/09/04
- 通信販売,
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カタログ通販に応用し、パーソナライズが効いた紙媒体に挑戦
この考え方をカタログ通販に応用したらどうなるだろうか。カタログ通販がサービスとして優れている点は、次が挙げられる。- 目利きのバイヤーが厳選した商品
- プロによって編集された質の高いコンテンツ
ECを運営したことがないと、なかなかピンとこないかもしれないが、EC上ではスペースの制約が少ないため、ロングテール戦略が相対的に優位とされている。
SEOの観点でいっても、商品数の多さはアドバンテージだ。しかしだからこそ、「厳選」されていないことがしばしばある。
また、コンテンツも究極的には無限に掲載できるため、紙面の制約を強烈に受け、かつ出し直しがきかないカタログと違って、「推敲」されていない文章や写真が多く使われがちだ。
一方で、カタログの不便を挙げると、次の点だろうか。
- 自分が今欲しい商品を提案してくれるわけではない
- 自分が必要なタイミングで届くわけではない
- 重く、かさばる
そこでディノス・セシールは、これらの課題に対し、Web上の行動ログ(今後はWeb以外にも取り組む予定)をデジタルプリンターに連携することで、パーソナライズが効いた紙媒体をリアルタイムに発行するという実験的なアプローチを取りながら、イノベーションを模索している。
これまでの過去のデータによるセグメンテーションではなく、より直近、願わくば近未来のニーズを察知して、顧客にオファーを出すつもりだ(スコアリングとAIによるディープラーニングで実現できるかもしれない)。
これでレスポンスが上がれば、重くかさばるカタログを分冊して、フリークエンシーを上げるといった夢も広がる。
検索時点で顧客の欲しいものは決定している
次に②の「戦略的偶然」について見ていこう。ECは、「集客→コンバージョン→リテンション」までをWeb上で完結しうる非常に優れたモデルだ。しかし、Web上で完結できるビジネス規模は限られている。
それは米国Amazonの売上が全米ECの44%を占める一方で、全米小売で見れば4%に過ぎない(十分という見方もあるけれど)ことが、ひとつの証左である。
まして日本のEC化率は、米国のそれよりさらに低い。
繰り返しになるが、ネットで検索をしている時点で顧客の欲しいものは決まっていると考えるべきだ。購入する商品自体が決まっていなかったとしても、その消費が解決すべき課題や問題は顕在化しており、解決策を探している。
この場合、コンテンツマーケティングによるSEOは、自社の商品やサービスを直接知らない顧客候補にアプローチするための偶然を掴み取る手段として有効である。だが、EC(というかデジタル全体)をひとつのソリューションとして捉えるようになった時点から、もうひとつ手前の消費行動プロセスをコントロールしたい衝動に駆られる。
つまり、「欲しいと思う」偶然の瞬間に立ち会うことだ。
もしこれが成功するならば、ECのKPIでいえば指名ワードによるオーガニック流入か、QRコードなどからのDirect流入が増える可能性が高い。その結果、買うものが決まったユーザーの争奪戦を、Amazonや楽天としなくても済むということだ。