ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #48

米国マンハッタンの超人気店舗で、レジ待ちが無くなった仕組み「セルフレジを軽視してはならない」

 

レジ待ちには「並列並び」「1列並び」「n列並び」がある


 筆者がニューヨークで定点観測する店のひとつが、マンハッタンにあるホールフーズのコロンバスサークル店です。ホールフーズにしてはコンパクトですが、夜間でも大勢の来客がある人気店です。有人レジが30台あっても、常にレジ待ちができています。

 この店のレジの並び方は独特です。「並列並び」と「1列並び」のハイブリッド方式を採用しています。「並列並び」は、各レジに来店客が直接並び、レジそのものから列が発生するものです。レジが2台なら列は2列に、レジが10台なら列は10列になります。客数が多い食品スーパーやGMSにおける食品コーナーの多くが、この並び方でしょう。ただし、並列並びの弱点としては、来店客が「空いている」と思って並んでも、前の客にトラブルが発生したり、レジ担当者が慣れていなかったりした時などに時間がかかってしまい不公平感を覚えることです。

 一方で「1列並び」は、複数のレジに対して、来店客が一列に並び、空いたレジに順番に向かうという方式です。先に並んだ人が先に処理されるという公平性を重視した並び方ですが、レジの並びが解消するまでの時間は長くなります。コンビニエンスストアや家電量販店、ドラッグストアの多くは、この1列並びでしょう。

 今回のホールフーズのコロンバスサークル店の並び方は、「n列(n>1)並び」と言えるでしょう。色分けされた5列があり、来店客は、その色の中で一番短い列に並びます。前方にモニターがあって、画面は列に対応するよう5色に分かれています。レジが空くと、色分けされた部分にレジ番号が表示され、番号が読み上げられます。色ごとに分かれた客は順番が来たら表示された番号のレジに向かいます。
     
※2014年10月 撮影:郡司 昇(グンジ ノボル)

 大掛かりではありますが、限られたスペースで並列並び(各レジの進み方による不公平感)と1列並び(総待ち時間の増加)の弱点を補完する仕組みです。規模は違いますが、日本のスーパーマーケットでもレジ2台に対して並び列を1列にする並び方が近年増えてきました。1列に2台であれば、先客のどちらが終わったか見ればわかるので、システムを入れなくても実現可能です。

 この店に、2022年9月に行きました。22時半頃にも関わらず、いつも通り大勢の来店客で賑わっていました。レジに行くと、30台ある有人レジのうち6台ほどしか稼働しておらず、5列のうち4列はクローズして、1列並びになっていました。それでもレジ待ちの客は数名程度でした。

 以前の方式を3回ほど体験している筆者として、この状況は本当に驚きました。変化が生まれた要因は「セルフレジの導入」です。12台のセルフレジを入れた結果、大部分の来店客はセルフレジで会計を済ませるようになったのです。身分証明の必要なアルコールなど特定の商品を購買する客などは、有人レジを利用します。10分ほどの観察では7~8割の来店客がセルフレジを使用していました。
  
※2022年9月 撮影:郡司 昇(グンジ ノボル)
 

セルフレジの課題と解消方法


 日本では「決済の進化」というと、Scan&Goやタブレットカートなどに注目が集まり、従来からあるセルフレジに関しては、注目度が低いのではないでしょうか。

 セルフレジの大きな課題は、万引きを含む「スキャン漏れ」と「年齢規制商品」への対応です。そのため日本のセルフレジ導入店は、サポートスタッフを4~5台に1人配置しています。しかし、米国のセルフレジにはサポートスタッフがほとんどいません。

 前者は、AIでスキャン漏れの疑いや不審な動作を検知することが現実的にできる時代になったので、ある程度の改善が最低限のコストで可能です。後者は、米国のように有人レジに回ってもらうのも手ですし、ノルウェーのように年齢制限商品を事前登録した生体認証(ノルウェーは指紋認証)で購入する仕組みが認められると、効率や年齢制限の精度が上がります。

 次回は、セルフレジにおける「ついで買い」について考えていきましょう。
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