最新ニュースから読み解く、物流とマーケティング #13
ECで注文しても商品が届かなくなる未来。物流業界が抱える「2024年問題」とは?
2023/03/01
どれだけの残業で配送されているのか?
上記のグラフは、トラック運転者の年間労働時間の構成比を示している。現在の基準でもすでに、全体の4.3%が3516時間を超えて規定を上回っている(レッドゾーン)。
これが2024年4月1日の改善基準では3300時間以上もレッドゾーンに入る。つまり、現在の4.3%に17.4%が加わり、合計で21.7%は長時間労働ができなくなる試算となる。単純計算すると、2割の荷物が配送できなくなるのだ。
さらに深刻なのは、改善基準で3割強の労働時間が失われる長距離輸送だ。そうなると、九州の生鮮品が関東に届かなくなる危険性がある、と矢野教授は指摘している。一方で、北海道の産品はフェリーで茨城県大洗港に輸送されるため、ドライバーの長時間労働にはならず影響は少ないようだ。
長時間労働ができなくなるため、九州から東京に来る途中でドライバーの交代が必要になる。宮崎のマンゴーが届かなくなる、もしくは鮮度が落ちた生鮮品しか東京に届かなくなる可能性が大いにある。
「2024年問題」への2つの対応策
あと1年間、待ったなしという状況の中で、現在どのような対策が打たれているのだろうか。今回は、その中でも2つの施策を紹介する。
ひとつ目は、「モーダルシフト」だ。これは、トラックによる幹線貨物輸送を「地球に優しく、大量輸送が可能な海運または鉄道に転換」することをいう。海運と鉄道による輸送は、少人数で大量に物を運べるというメリットだけでなく、CO2の排出量もトラックと比べて大幅に少ないという点で優れている。
運送会社の営業用トラックのCO2排出量は216g-CO2(トンキロ当たり。以下同様)であるのに対し、船舶は43g-CO2とトラックのわずか5分の1、鉄道に至っては21g-CO2と10分1以下にとどまる。
今回の「2024年問題」を契機に「モーダルシフト」が加速することが予想される。
2つ目は、「中継輸送」だ。2018年9月、新東名浜松サービスエリアに「コネクトエリア浜松」という中計物流拠点が開設された。ネクスコ中日本と地元企業の遠州トラックが連携整備したものだ。
東京からトラックを運転して来たドライバーと大阪から来たドライバーが、この中継地点でトラックを交換し、それぞれが元いた東京と大阪に帰る仕組みだ。これによりドライバーは自宅に帰ることができ、しっかりと身体を休めることになる。このような中継基地が日本各地にできれば、乗り継ぎが可能になり、長時間労働から解放され、朝出て夕方までに自宅のあるエリアに帰れることになる。