関西発・地方創生とマーケティング #36前編
世界観で話題、低アルコールのクラフトカクテル「koyoi」が2年で成長できた背景【SEAM代表 石根友理恵氏】
お客さまの「ペイン」よりも「ニーズ」を知ることの重要性
料理ごとに、その都度違ったワインを合わせて楽しむペアリング。ホテル事業に身を置いているとよく使う言葉なのですが、今回の取材を通して、初めて「シーンペアリング」という言葉を知りました。これは石根さんたちの造語で、生活のなかのシーンごとに、その都度違ったカクテルを合わせて楽しむペアリングを指すそうです。
石根さんは、「嗜好品であるお酒の一番の価値は、どういうシーンで、誰と、どう飲むか」だと言います。この意見については、私もそう思います。ビジネスであれば会食を、プライベートでは食事の約束をすることができれば、その時点でことの半分は成すことができています。そして、その場でしっかりとコミュニケーションをとることで、その後は物ごとがスムーズに運んだという経験が何度もあります。
また、嗜好品であるお酒は、お客さまに選んでもらうためには、情緒的側面が大切になると、エクスタシーという言葉を使って説明してくれました。それは、すなわち自分たちの提供する「koyoi」でお客さまにどう気持ちよくなってもらうのか。言い換えると、緊張状態からどう解放し、ポジティブな方向に持っていくことができるのか。つまり、どういうシーンで、どういう気持ちで飲むものなのかという点が、商品の伝え方の一番の肝になると考えて、シーンペアリングを重要なポイントとして設定したそうです。
ただ、実際にお客さまがどのように飲んでいるのか、その飲み方は多様にあるので、それを知るためにターゲットとなる女性200人に「お酒を片手にしたいシーンは?」などについてアンケートをしたそうです。その回答から、多くの声が挙がった場面や、共感を呼びそうな感情を商品のシーンとして設定します。
石根さんは、「ターゲットとなるユーザーの感情、気持ちを考えるということが大事です。ペイン(顧客の抱えている悩み)よりも、ニーズを知ることのほうが価値があるんです。なぜならペインは分かりやすくて、ある程度項目が決まっている一方で、ニーズはこうなったらいいのにということがたくさんあるので、その中からよりターゲットに近いものを選ぶことができるんです。そして、特に嗜好品をつくる仕事だからこそ、実際にユーザーの声を聞いて気持ちに寄り添うことが徹底できます」とマーケティングのポイントを語ります。