関西発・地方創生とマーケティング #37前編

エスカレーターではなく、つい階段をのぼってしまう。消費者が行動したくなる「仕掛け」がマーケティングに使える【大阪大学大学院 松村真宏 教授】

 

仕掛けとマーケティングの関係性


 次に、松村さんの考えるマーケティングについて聞きました。松村さんは「マーケティングとは買わせることではありません。売る側の視点だけで、『マーケティングとは売ることだ』と思われることも多いのですが、決してそうではありません。消費者が欲しいものを見つけられるようにするのがマーケティングです」と言います。

 いわゆるマーケティングファネルでは、商品やサービスを知ってもらうという認知の段階があります。その後、興味を持ってもらい、購入するというプロセスになります。知らない人に対して知ってもらうことや、考慮集合(購買検討の対象となる商品の集合)に入ってもらうためのアプローチとして仕掛けは使えますし、実際に使っています。

 たとえば、食品は試食してもらわないと味が分からないので、考慮集合に入れるために試食を促進するという施策を行います。しかし、試食をしたら買わないといけないと感じるため、試食をためらった経験のある人もいるのではないでしょうか。その心理的ハードルを下げるために、爪楊枝を使って、美味しかったほうに投票してもらうという調査をします。アンケートに答えたことで、返報、即ちお礼をしたことに置き換わります。それによって試食するだけという、うしろめたさをなくすことができるので、結果的に試食する人が増えます。このように知ってもらい、体験してもらうという、マーケティングの最初の段階はクリアできると言います。そういう意味では、マーケティングのプロセスの中でも、最初の段階で使えるのが仕掛けだと思います。

 また、仕掛学において、松村さんはお金が絡むところにも使えないことはないけれど、あまり使いたくはないと言います。つまり、知らない商品やサービスを知ってもらい、その人の喜びが増すことに仕掛けは活用するものだと語ります。

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