関西発・地方創生とマーケティング #37後編

データ偏重のマーケ業界に警鐘。データでは分からない消費者を「笑顔」にする大切なこと【大阪大学大学院 松村真宏 教授】

前回の記事:
エスカレーターではなく、つい階段をのぼってしまう。消費者が行動したくなる「仕掛け」がマーケティングに使える【大阪大学大学院 松村真宏 教授】
 人間の心理を利用した、マーケティングに通ずるような現象が起こる「仕掛け」を体系的に理解しようと考え、学問分野として「仕掛学」を立ち上げた大阪大学大学院 経済学研究科 教授の松村真宏さんをご存知でしょうか。

 大阪駅の階段で寄り道したい街を選んでもらう人気投票など、おもろい仕掛けをしていて、ぜひ一度、お話を聞きたいと思い取材しました。前編では、仕掛けとは何か、マーケティングとの共通点などについて紹介しました。後編では、松村さんが仕掛けを追求しようと思ったきっかけや仕掛けのアイデアのつくり方などについて伺いました。
 

データの限界から仕掛けを追求する


 昨今、マーケティングでも注目されているデータ活用に関して、松村さんに伺いました。松村さんは、「行動ログを取っても、人の考えの全てが分かるわけがありません。なぜなら人は社会規範に従う、社会性の高い生き物なので、周りの環境や状況、他の人の存在によって行動を変えるからです。そういう意味で、現在のデータは圧倒的に不足しています」と言います。

 松村さんは、もともとはデータの専門家でしたが、出来ないことのほうがはるかに多いと、その限界が分かってきたので研究を止めたそうです。その後、試行錯誤して仕掛学のヒントを見つけます。そのきっかけは、大阪の天王寺動物園の象のエリアに続く小径の脇にあった筒です。何の説明もないのに覗きたくなり、覗いてみると、そこには象のフンがありました。

 その筒がデータを使っていないのに人の行動を変えたことに驚き、そこで仕掛けに興味をもったそうです。ずっと問題意識を持っていたからこそ、仕掛けが研究の切り口になるのではないかと気づきました。そして、事例を収集することでパターンが見え、仕掛けをつくる方法も見えるかもしれないと思ったそうです。

 ただ、始めから勝算があったわけではなく、とにかく仕掛けに関する事例を集めることを徹底したそうです。経験上、3年取り組めば博士号も取れるだろうということが分かっていたこともあり、いずれ何かに繋がるだろうと挑戦します。でも実際には、現在のようにさまざまな相談を受け、「仕掛学」として認知されるまでに10年かかったそうです。
  
引用:大阪大学大学院 経済学研究科 教授 松村真宏氏

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