ファミリーマートのリテールメディア特集

1万店以上にサイネージを計画。ファミリーマートのリテールメディア事業が生み出す可能性とは?

 近年、国内外の小売事業者による新たな広告事業として「リテールメディア」が注目を集めている。リテールメディアとは、小売事業者が運営するECサイトやアプリ、リアル店舗に設置されているデジタルサイネージなどのメディアを指す。購買に近いタイミングで接触できるうえ、商品の販売データや顧客の行動データなどを活用できるため、高い成果につながりやすい。米国では、大手小売業者がリテールメディアに取り組み、顧客の属性や嗜好に応じて広告を配信し、収益の多角化を図っている。

 日本では、大手コンビニエンスストアの中でファミリーマートがリテールメディアを強化。2020年9月、伊藤忠商事が中心となり、ファミリーマート、NTTドコモ、サイバーエージェントの4社による小売事業者の購買データを活用した広告配信と広告事業を行う新会社「データ・ワン」を設立した。

 同社は、ファミリーマートなどの小売事業者が保有する購買データとNTTドコモが保有するdポイントクラブの会員データと属性情報を統合し、ID単位でのターゲティング広告をファミリーマートが提供するアプリ「ファミペイ」やNTTドコモが提供するアプリ「dポイントクラブ」などで配信している。そこで今回は、リテールメディア特集として、その可能性とマーケティングへの活用方法についてデータ・ワンへの取材を通して考えた。
 

ファミリーマートが考えるリテールメディアとしての可能性


 国内のコンビニエンスストア業界では、店舗数がある程度飽和したことから出店競争がひと段落し、ドラッグストアのように医薬品や日用品などを取り扱ったり、ECや通販などネットにも出店したりと、各社で新たな事業戦略が進められていた。また、米国では、アマゾン・ドット・コムが無人店舗である「Amazon Go」の出店や、ウォルマートが広告事業への参入から急成長するなど、小売事業から派生した新たな動きが活性化していた。

 ファミリーマートにおいても、自社アプリの「ファミペイ」をはじめとするデジタル領域の強化という側面において、全国に1万6000店舗以上を構え、1日に計1500万人ほどが来店することで蓄積される消費者のさまざまな属性と、飲食料品から日用・雑貨品まで幅広い種類の購買データといった既存の資産を活用した新たな成長モデルをつくる必要があると考えていた。

 また、ファミリーマートの親会社である伊藤忠商事は、コンシューマー向けビジネスを構築するときには、マーケットインの考え方が重要であるとし、消費者の声を聞く必要があった。消費者と直接の接点を持つ小売業の中でも、家族の代表者が訪れる機会の多いスーパーマーケットや、年に数回しか購買機会のない家電量販店とは違い、コンビニエンスストアは若年層からシニア層まで幅広い世代が日常的に訪れる場所である。

 一方で、日本の広告界でも、2019年にインターネットの広告費が初めて2兆円を超えてテレビを上回るなど、主要な広告メディアがマスメディアからデジタルへと大きくシフトしている。

 こうした背景から、小売店の購買データを元に広告配信の最適化を行い、クライアントにとって広告効果の改善が可能となる、データ・ワンのビジネスモデルが構築されていった。データ・ワン 代表取締役社長の太田英利氏は、「デジタルの業界では、数が最も重要なキーファクターである。ファミリーマートには圧倒的な数のアセットがあった」と話す。
  
データ・ワン 代表取締役社長
太田 英利 氏

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