ファミリーマートのリテールメディア特集
1万店以上にサイネージを計画。ファミリーマートのリテールメディア事業が生み出す可能性とは?
データの限界から仕掛けを追求する
今後、他社がデータ・ワンと同様のビジネスモデルを展開してくる可能性もあるが、「なかなか真似は、できない」と太田氏は力を込める。リテールメディアで十分な成果を出すためには、デジタルに限らず、広告マーケティングや小売の知見、そして精緻にターゲティングし、効果を測るための膨大な量のデータが必要となる。同社では、4社が各々のスキルセットを持ち寄って統合し、設立から2年のアドバンテージがあることが競合との差別化要因になると考えているのだ。
「最も大きいのは、我々が3000万以上のID付きの購買データを持っていることになる。どの会社もいろいろな購買データを持っているが、データのボリュームがなければ正確性に欠けるため、結局はどこかにオーガナイズされ、最終的には数社しか残らない。その中で我々は、大きなデータボリュームに加えて、時間的にも先行しているので追随は難しいはずだ」(太田氏)。
今後はドラッグストアやスーパーマーケットなど他業態とデータアライアンスを組み、商品の購買データの網羅性を上げることも視野に入れている。「すでにコンビニエンスストア以外の業態やレシートアプリの会社などと、アライアンスを組むべく話を進めている」(太田氏)。
さらに、広告の表示面として、ファミリーマートの店内に設置するデジタルサイネージ「FamilyMartVison」も増やしていく予定だ。現在の設置店舗数は全国34都道府県で約3000店舗への設置が完了しており、首都圏、北陸・中部、関西、沖縄といった4つのエリア限定での配信も可能で、地元企業からの広告出稿などにも対応している。今後、年内には1万店舗への設置を目標としており、配信の細分化(店舗立地区分単位での配信など)も予定している。
近年、テレビメディアはシニア層、デジタルメディアは若年層が比較的多いというように各メディアの強みや弱みがはっきりしてきている。現状、幅広い世代をターゲットにする広告主は、テレビにもデジタルにも取り組まなければならない。一方で、デジタルサイネージがカバーするのは、来店者である。つまり、若年層からシニア層まで幅広い世代とエリアに広告配信できる。
さらに、1日の時間軸で見ても、サイネージには特異性がある。「朝の支度時間や通勤時間、夜の帰宅後や就寝前は、テレビやスマホでメディアに接触する機会が多くあるが、意外と昼間は少ない。そこで、昼間に訪れる機会の多いコンビニがその空白のメディア接触帯を埋めることができる。リーチで考えると、リテールメディアはテレビに匹敵するほどのインパクトになると予測している。その上、購買行動を起こす場所にあり、来店客のリーセンシー効果を高めるので、これまでにない高いバリューを提供できる」と太田氏は語る。
実際に、店舗でデジタルサイネージの広告に接触した可能性が高い人をPOSデータからID単位で追うと、その後、購買しているケースが多いことが見えてきた。「データを見ても、確実に購買行動に影響を与えている。ID単位でデジタルサイネージの成果をレポートとして可視化できるソリューションも、他にはない我々の強み」(太田氏)。