ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #52

北陸の好調ドラッグストア2社は、小売業のマーケティングに多くの示唆を与えてくれる

 

地域性を活かした多様なアプローチのアオキ


一方、アオキは生鮮に関して、地域ごとに異なるアプローチを採用しています。
  
クスリのアオキ 山代店 2023年6月(撮影:郡司昇)

 金沢市街付近の店舗では、主に外部業者からの納品です。しかし、山代温泉近辺の店舗では、価格はやや高めでも品質を重視した商品を「コンセ」で提供しています。

 ちなみに、「コンセ」とはコンセッショナリーの略になります。スーパーやドラッグストアの一画に入店する専門店で、店名を掲げるケースと掲げないケースがあります。後者の場合、来店客からは直営売場のように見えます。

「テナント」との違いとしては、売れた分だけをスーパーやドラッグストアが仕入れたことにして、売上を計上する消化仕入契約が多いことが挙げられます。出店する側からは、小売りではなく、卸売りになります。ドラッグストアやスーパーマーケットから見ると、利益率は低いものの、自身では難しい専門性の高い売場をつくることができます。
 
クスリのアオキ 伏見台店前からは競合ドラッグストアの看板が目視できる 2023年6月(撮影:郡司昇)

 私が視察した時は、牛ザブトンも含んだ「国産焼肉セット100g」 416円(税抜)、ドラッグストア生鮮では冷凍や干物中心である鮮魚も「調理済み赤がれい」200円(税抜)、「調理済み石川県産めぎす5尾」298円(税抜)など、品揃えが明らかに違いました。

 これは近隣の競合店舗を考慮したと思われます。伏見台店の周辺には、安い生鮮のあるゲンキー、生鮮は強くないが食品構成比の高いコスモス薬品やウエルシア、ドラッグストアが多く、逆に高価格・高品質型のスーパーマーケットがそれほど多くないという立地でした。

 ゲンキーの徹底した標準化と効率化は、商圏人口が減少する地域で小売店舗を維持するために欠かせない手法だと考えます。一方、アオキの地域性を活かした多様なアプローチは、顧客のニーズに対する深い理解を示しています。

 どちらの戦略も、それぞれのビジネス環境と目標に合わせたものであり、実際に自分の目で見て、買い物できて良かったです。次回は、北陸の地場のスーパーマーケットについてご紹介します。
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