ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #54

米国・小売店の「最新AIレジカート」会員特典にリテールDXの未来を感じた

 

商品をカートに入れる楽しさを促進する工夫


 ShopRiteに導入されたCaper Cart3のユニークな取り組みとして、星を貯めるという仕組みがあります。会員カード番号を登録すると1つ目の星がもらえ、その後、商品を購入することで2つ目の星がつきます。

 星は最大で3つまで貯められる仕組みとなっており、星が貯まることで何らかの特典があるのではないかと期待されます。カートの購入額が35ドルを超えると3つ目の星が付きます。

 実際に35ドル以上の買い物をしてみると3つ星が揃い、アニメーションが流れた後にルーレットが回り、さまざまなキャッシュバックや割引などのインセンティブを獲得することができます。私が35ドルを超えて購入した際には、5ドルの割引が当たりました。このような体験は、カートをさらに活用しようと思わせる非常に魅力的な仕組みだと感じました。


筆者撮影

 このカートを使用してみて、最も魅力的だったのはこのルーレット機能でした。日本のアプリなどでも似たような取り組みは見受けられますが、実際の店舗でのショッピング中に商品を購入した瞬間にタブレット上でルーレットが回るという体験は新鮮でした。買い物をしている最中に楽しいイベントが生じることで、さらに会員カードの作成や専用カートの使用に魅力を感じました。

 ルーレットの結果に不満を感じたり、当たりを獲得できなかったりした場合に商品を戻して再挑戦するということも考えられますが、そのような行為は許容されない仕組みになっています。不正行為を疑われるようなアカウントは、凍結される可能性もあるでしょう。

 レジでの決済については、会計ボタンを押した後にタブレット上に表示されるバーコードをセルフレジでスキャンするだけです。筆者はVISA Touch決済を選んだので、バーコードをスキャンした後は数秒で決済が完了しました。
 

買い物の楽しさを追求するDX


 後発ながらも、カートの充電方法など独自の工夫が盛り込まれていました。ハードウェアの性能や機能性に関しては、Amazon Dash Cartに一部劣る点も見受けられましたが、ルーレットを含めたCRMのアプローチは非常に興味深かったです。ShopRite店でのCaper Cartの導入を体験して、単なる効率化を目指すDXよりも、買い物そのものの楽しさを追求する方向性に興味を持ちました。

 2024年には、他の企業でもInstacartを介してこの種のカートが導入される可能性が考えられます。その際に、各企業がソフトウェア開発をどのように進めるのか、非常に楽しみにしています。

 ShopRiteは、WegmansやStew Leonard's、Trader Joe'sのような特色あるスーパーマーケットとは異なり、アメリカ東部での300店舗規模の一般的なチェーン店です。しかし、新しい技術への挑戦を通じて、訪問者には新しい興味や魅力をしっかりと提供していました。技術的な改善の余地はまだ見受けられますが、独特の体験を提供してくれる点で価値を感じました。

 米国東部への往復で24時間以上の時間を費やしましたが、その甲斐があったと心から思います。新しい技術や取り組みに挑戦し続ける企業に、感謝の気持ちでいっぱいです。
他の連載記事:
ニュースと体験から読み解くリテール未来像 の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録