関西発・地方創生とマーケティング #38

「八代目儀兵衛とセブン-イレブン」「koyoiとスマドリ」。企業間コラボレーションの極意とは?

 

目指す未来を何度も共有するコミュニケーション


石根 皆さんがいらっしゃる企業、会社と大きさが違うんですが、新規事業の立ち上げには参考になるかと思うのでお話させて頂きます。私は絶対にインハウスで取り組む、できるところまでは自社でやると決めているので、本当に業務領域が広いんです。朝に商品の試作をしているかと思えば、夜は物流の点検をしているみたいな感じです。さまざまな業務に取り組んでいるので、まず一番大切なのはそれぞれが「自分ごと化」することが、この規模だと一番重要です。

能川 どのように「自分ごと化」してもらうのですか?

石根 目指す未来を何度も共有し、私たちはここを目指していこう、今はこのステージにいるんだと伝えることが第一歩かなと思います。

タイミングとしては、月1の1on1で一人ひとりとしっかり話すことと、ボードメンバーには定例ミーティングに目指す定量状態、定性状態を定期的にシェアしています。また、数ヶ月に1回くらい、1日かけて合宿という形で未来の話など私たちはどうしていきたいかについて話し合う場をつくっています。

さらに、自分で事業計画を引いてもらい、コミットメントしてもらうようにしています。
これも「自分ごと化」のひとつの策で、自分で考えて頑張ろうとなると、本人の意思決定が増えるんです。メンバーの意思決定の量を増やしながら、自分自身が考えた事業計画に対して切磋琢磨していくことが重要です。

会社に関して自分がまだ知らない情報があって、別のところでいろいろと進んでいる状態を、10~20人になるまでは無くすべきだと思っているので、今は基本的に会社に対して知りたい情報はほぼオープンにしています。

能川 ちなみに、どういう情報共有の仕方をしているのですか?
  

石根 朝会で、何か知りたい情報ありますか、と聞いています。また、月1で1on1もするので、そこでみんなには言えないけど知りたい情報や、何か話したいことがあるかを聞きます。1on1は場所を変えてカフェで話をして、そのときに私に対してこうしてほしいとか、思っていることとか、なんでも言って、と伝えています。

能川 
会社のトップである石根さんに対してメンバーの皆さんは、なんでも言うのですか?

石根 それがめちゃくちゃ出てくるんです(笑)。経営者には、フィードバックがないので、そこで私もすごく気づくところがあって、気をつけるね、という会話をしています。そのためには、会社に情報のムラがなくクリーンであることですね。それがすごく重要だと思います。

能川 経営者は孤独という話ですが、誰か相談する相手はいるのですか?

石根 社外のメンターは何人かいて相談していますが、スタートアップにおける事業にはフェーズがあります。今は事業を伸ばすフェーズで、メンバーが一番大事なので、あまり社外の大多数と積極的に話してはいません。

心が『週刊少年ジャンプ』なので仲間とか普通に叫んでしまうのですが(笑)。今は、仲間と一緒に切磋琢磨していくことが、最も事業の成長につながると思うので、社内メンバーがしっかり成果に向き合えるように組織の改革中ですし、私も一番リソースを使いたいと思っています。
 

コラボレーションを実現するために


能川 お二人からそれぞれ聞きたいことありますか?

神徳 ビールメーカーとのコラボレーションの取り組みはいかがですか?

石根 アサヒビール社と電通デジタル社の子会社であるスマドリと、コラボブランドを提供しています。お酒の事業を始めて1年半で、まさかこんなに早くコラボレーションできるとは思っていませんでした。スマドリを立ち上げたというリリースを見たときに、私たちの目指すことと同じ取り組みだったので、これは運命だと思いました。すぐに当時の代表の梶浦さん(元・代表取締役社長)をFacebookで見つけて、メッセージを送りました(笑)。

スマドリにも「低アルコールで多様性を広めていく」というミッションがあって、それが私たちが掲げているミッションと同じだったのでコラボが決まりました。私たちの独自性の部分を知ってもらえて、実現できたのでよかったと思います。



神徳
 石根さんからプッシュして実現したのですね。

石根 はい、アサヒビール社も私たちのことや「シーンペアリング」を知ってくださっていたので実現できたと思います。セブン-イレブンとは、コミュニケーションの回数も、大変なことも多かったと思いますが、何が一番大変でしたか?

神徳 特に食に関しての要求のレベルが高いので、そこは常に大変です。なかなか道のりは長いですが、今後もプロジェクトは続くと思います。

石根 その長期的な取り組みは、すごく難しいだろうなと思うので、またお話を聞かせてください。

ここまでが、セッションの内容なのですが、今回記事にするにあたり、改めていいことをおっしゃっているなと思いました。

まずは、石根さんの、「目指す未来を共有する社内コミュニケーション。私たちはここを目指していこう、こうなるから今このステージにいる、ということを共有するところが第一歩」という発言が印象的でした。これは、決してスタートアップや小規模な企業に限った話ではなく、その大切さを再認識しました。

次に、神徳さんの、「いくら戦略とかアクションを考えても、実行するのは人。だから『人』の部分を変えないといけない」。これは、マーケティングに携わる人に留まらず、すべての人にとって重要なことで、本質を突いていると思います。人が人にコミュニケーションするわけで、やはりポイントは「人」だと確信しました。

こうやってイベントでモデレーターをさせていただくと、自分の聞きたいことが聞けて、そして期待以上の気づきがあって、役得だなと思います。さらに記事化して、石根さんの言葉を借りれば「言語化する」過程で、あらためてそのときには気づかなかった重要なポイントに気づくことができました。

最後に、お二人のお話が、読者のみなさまの、何らかの琴線に触れたなら幸いです。
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