ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #55
日本のスーパーは出口付近がパン売場なのに、世界第4位小売企業が入口で67円プレッツエルを売る理由
2023/12/22
LiDLのベーカリーは出口ではなく入口にある
筆者が視察したLiDLは3店舗とも、入ってすぐの場所にベーカリーがありました。ヨーロッパを視察した友人や知人から聞く話でも同様のレイアウトが多いようです。
LiDLのパンの特徴のひとつにハードディスカウント業態ならではの低価格があります。物価高の米国ですが、売れ筋のクロワッサンが69セント(1$145円換算で約100円)、安いパンは49セント(約71円)、流行の注力商品プレッツェルは69セントで2つ買うと1つ無料なので3つ買うと1つ67円という激安です。
陳列什器の裏側はベーカリー設備になっていて「smell it,buy it,try it* *to believe it(パンを香って、買って、試して。美味しいと信じるために。)」と下の写真に書いてあるとおりに、食べてみるとちゃんと美味しいです。安いのにクロワッサンはしっかりとバターの香りがします。なお、米国ではトランス脂肪酸の含まれるマーガリンが存在しないのでバターを使っているのは他の企業も同様ですが、こんなに低価格ではありません。
LiDLに入店してすぐ、ベーカリーコーナーに行くと焼きたてパンの香ばしい香りが漂っています。香りで目を引いて、価格を見ると激安なのです。来店客にとって、この印象は強く残ります。
入口と出口の商品配置は店舗の印象を作る
先日、TBSテレビ「THE TIME,」のTIME マーケティング部コーナーで「レジ横ついで買い戦略」のコメンテーターをしました。
参考:TBSで「レジ横ついで買い戦略」のコメンテーターをしました
ここで紹介しているIKEA事例は、レジを通った後の体験事例として面白いものです。IKEAの郊外店においては、長い距離を歩く間に買おうかどうしようかという検討を繰り返します。この歩き疲れと「決断疲れ」で血糖値が低下して、身体が糖分を欲します。
そして、レジで財布を開いて買い物をした後に、最後の目玉品が待っています。番組ではレポーターの重松さんが、50円のプラントベースソフトクリームと80円のベジドッグ、190円のドリンクバーの合計320円(税込)を美味しそうに食べていました。
最後に安さを含めた良いイメージを持って帰ることになるので、次も来店しようという気にさせる上手な戦略だと思います。
なお、収録前に私が書いたメモは以下の通りです。
店舗において入口と出口にどういう商品を配置するかによって、顧客体験は大きく変化します。次回来店する気になる仕掛けを考えて店舗を視察するのも面白いものです。
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