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リテールから考える「マーケティングの本質論」 #05

認知バイアスから逃れて、後悔しない「大切な意思決定」をするための方法【コメ兵 藤原義昭】

前回の記事:
知らないと損する「ゴールとプロセス設定」の効果的な使い方【コメ兵 藤原義昭・後編】
いろいろと説はありますが、人間は1日に1万回とも2万回とも言える数の決断をしているそうです。とにかく大量に毎日、決断しているわけです。

 私自身、日々の業務において、部下からの提案、パートナーからのレポート、マーケティングデータなどの情報を気にしながら、様々な決定を下しています。そして、これらの決定の積み重ねが施策の成否を決め、自身や部署の目標を達成し、会社の業績に貢献し、世の中にインパクトを与えていくのです。

 今回は、その毎日の意思決定に、どのように向き合えばよいのかを私なりにお話いたします。
 

自分の思考の癖を自覚する

 人間の意思決定は、さまざまな先入観、固定概念、過去の経験、利害などに影響を受けます。本人はそのつもりがなくても、他人から見たら合理的でない意思決定と行動をとってしまうことも少なくありません。この偏り、偏見、先入観のことを「認知バイアス」といいます。

 認知バイアスのひとつに「ハロー効果」があります。ハロー効果とは、あることを評価する時に、対象が持つ際立った特徴に引っ張られて、他の評価に対してバイアスがかかってしまうことです。

 例えば、大ヒットしたテレビCMを制作した経験豊かなクリエイターから提案をもらって、よく考えもせずに、その案は大丈夫だと採用してしまい、失敗してしまった経験などないでしょうか。

 本屋にふと入ったとき、目についた本の帯に自分の好きな著名人の推薦文が書かれていて、中身をよく確認せずに買ってしまった経験などはないでしょうか。

 さらに「感情バイアス」という認知バイアスもあります。これは、たとえ相反する事実が合ったとしても、それを認めたくないという感情が勝ってしまい、自分に好ましくない苦痛を受け入れないといったことです。

 本屋で帯だけを見て買ったものの、その本がとてつもなく面白くなく、自分には役に立たなかったとしても、それを認めたくない自分がいるときなどでしょうか。これが感情バイアスです。
 
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 もうひとつ、マーケターが陥りやすい認知バイアスとして「サンクコスト効果(コンコルド効果)」があります。サンクコストとは埋没コストのことで、過去に積上げてきたコストや時間をもったいないと思う心理が判断に影響を及ぼしてしまうことです。

 これはコンコルド効果とも言います。イギリスとフランスで共同開発した超音速飛行機「コンコルド」は完成前の段階で、利益が出ないことが判明していました。しかしそれまで投じた資金の大きさから、完成させることが目的化してしまったことに由来しています。

 あるキャンペーンを行って当初は良かったものの、そこから徐々に効果が下がってきたにもかかわらず、それまでに投じたコストの大きさや成功体験からバイアスがかかり、止めることができなくなることが往々にあります。これらは、すべて認知バイアスの影響を受けています。

 このように日々の業務での判断で、様々な認知バイアスが重なって自身の正しい判断を歪めてしまいます。認知バイアスについては、少し調べてもらえれば様々な種類が出てくるでしょう。しかし、ここで大切なのは、認知バイアスの種類を知ることではなく、自分自身がどのような認知バイアスの影響を受けているのかを知ること、つまり「思考の癖」を自覚することです。

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