リテールから考える「マーケティングの本質論」 #05
認知バイアスから逃れて、後悔しない「大切な意思決定」をするための方法【コメ兵 藤原義昭】
常に批判的であれ
では、これらの思考の癖から抜け出して、より正確な判断を下すためには、どのような考え方が必要でしょうか。私がいつも気をつけていることは、3つあります。1つ目は、常に批判的であることです。
批判的と言うと、人の発言に対していつも否定しているような嫌な人をイメージされるかもしれませんが、違います。自分自身の中で発言やレポートに対して、「それは本当か?違う考え方があるのではないか?」と、前提を疑う癖を持つことです。
例えば、「売上が落ちている」と言ったとき、「競合のせいだ」と脊髄反射的に答えを出すのではなく、その前提を疑ってみることです。競合のような外部要因の可能性もあるかもしれませんが、要因はもっと複雑で自社サービスの質の低下など、内部要因に起因しているかもしれません。
ただしビジネスですので、スピードが重要です。すぐにこの考え方を導入するのは無理でも、常に日頃から考えられるように習慣化していくのです。
意見(opinion)と事実(FACT)を分ける
2つ目は、意見と事実を分けるということです。日本語には曖昧な表現があり、事実と意見が会話の中に混在してくるため、正しいのか正しくないかがわからなくなってしまいます。例えば、よく聞くのが「多い・少ない」という意見です。
「今回のキャンペーンの集客は、お客さまの入場が比較的多かったため、次回も継続して実施しましょう」
比較的?多かった?これでは、何と比べて多かったのかがわかりません。本来であれば、目標値に対して、どのぐらい達成していたのかという定量的事実を確認し、その要因を分析すべきです。また、意見というのは、客観的な事実を積み上げて出てくるものであるはずで、事実を確認した上で言うべきです。
部下やパートナーから報告を受けるときは、批判的で在ることに加えて、「意見の箱」と「事実の箱」に分けて考えることが重要です。