関西発・地方創生とマーケティング #39

ターゲットは若者なのに値段は1泊15万円。SNSで独自の価値を伝える「Nazuna京都」の正体

 インバウンド需要が戻り、海外からの観光客が溢れて、ますます勢いを増しているのが京都の宿泊業です。老舗をはじめとする高級旅館・ホテルが立ち並ぶ中、日本のよさを感じられる巧みなマーケティング施策で独自の価値を創出し、新たなブランドを築いているのが「Nazuna京都」を運営するNAZUNAです。

「Nazuna京都」は、昔の町並みが広がる町家が残った一角を丸ごとリノベーションした宿泊施設です。1泊2食付き2人で10万円ほどするので、ターゲットとする20代や30代にとっては決して安くはない価格設定です。それにも関わらず、高稼働を維持していることに、同じホテル事業者として興味深く感じていました。そこで今回は、京都の町家をリノベーションした宿泊施設を提供するNAZUNA 代表取締役の渡邊龍一氏(2024年4月1日付けで、同社 代表取締役に就任)に、集客の軸となっているSNSマーケティング戦略と高級旅館におけるターゲティングの考え方などについて詳しく聞きました。
 

新たな価値創造のきっかけは「せっかくだから需要」


 NAZUNAの事業が始まるきっかけとなったのは2015年です。旅行業に携わっていた前代表である大門慎悟氏(2024年4月1日付けで会長に就任)は、海外からの旅行者に付き添っているとき、ザ・リッツ・カールトンやハイアット リージェンシーなどのラグジュアリーホテルに泊まるお客さまが「京都らしさを体験したい」という強い思いをもっていると感じていました。また、主に京都に多く点在する商売人の家である「町家」という日本文化を守りたいと思い、始めたのがきっかけです。


Nazuna京都 椿通の様子。四条大宮付近の一角にあり、築110年以上の町家が立ち並ぶ約1400平米のL字型路地一体をひとつの宿に改修した旅館

 つまり、旅行業を経験していろいろなマーケットを見ていた大門氏だからこそ、海外旅行者の「京都に来たのだからこれを体験したい」という「せっかくだから需要」に気づいたのです。

 コロナ禍前に始まった大門氏の新事業はSNSを中心に話題となり、宿泊施設の開業後すぐ軌道に乗ります。当時、インバウンドブームが到来していたにも関わらずホテルが足りない時代だったことに加え、町家をリノベーションしたという独自性が観光客に受け入れられたそうです。

 その時は、町家旅館がそう多くはなかったので希少価値がありました。そしてなんといっても、「Nazuna 京都 二条城」が2016年のオープン以降、3年連続でミシュランガイド京都・大阪エリアの3レッドパビリオン(3つ星旅館)に掲載されたことが人気を集めた最大の要因でした。
 
Nazuna 京都の公式Instagramアカウントで、洗練された投稿やリールが数多く並ぶ。

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