関西発・地方創生とマーケティング #39

採用倍率20倍、“おせっかい”でお客さまを虜にするホテル「Nazuna京都」の裏側

 

採用倍率は20倍、若手が働きやすい環境


 コロナ禍以降、人手不足が問題になっていますが、特にホテル業界ではスタッフがいないが故に宿泊を制限したり、レストランの休業日を設けたりと、機会ロスが多く発生しています。そんな中、Nazuna京都では、募集をかけると20倍もの応募があるそうです。渡邊氏はこの要因を「我々が掲げる理念の『おせっかい革命』に共感する人が多いからです」と言います。
 
NAZUNA 代表取締役
渡邊 龍一 氏

 大学在学中に飲食店の店長に就任、24歳でエリアマネージャーに昇格。その後コロンビア・ワークス株式会社に入社、不動産デベロッパー営業、人事総務部、運営事業部での経験を経てNazunaに参画、マーケティング部門でコロナ禍にさまざまな施策を実行。2023年に取締役に就任。現在に至る。

 加えて、役員を含めたスタッフの年齢が若く、働きやすいことも理由のひとつです。現実問題、数十年続く規模の大きいホテルの組織体系は重層的になりがちで、年齢も20代から60代と幅広く、20代や30代のスタッフから見れば上司が何層にもわたって存在することになります。その結果、お客さまのために自分がやりたいことがなかなか実現できない環境になりがちです。

 そうなると当然、「Nazuna京都」のような環境で働きたいと思う人は出てくるでしょう。現時点ではそういう環境で働くことができるホテルがそう多くはなく、規模も比較的小さいため、需給バランスからしても採用側が強いのかもしれません。とは言え、いずれは、あるいはもう既に、そこを意識していないホテル事業者は淘汰されていくのかもしれません。

“おせっかい”を大切にしているNazuna 京都のスタッフ
 

本部機能はすべてアウトソーシング


 ここで、経営側に焦点を当てましょう。NAZUNAの本部、いわゆるバックオフィスには、役員しか在籍していないそうです。人事、広報、デザインなど、そのすべてを外部パートナーに業務委託しており、社内ではそういう人材は育てていません。

 こういった仕組みのメリットを渡邊氏は「バックオフィス以外のすべてを外部に委託することで、客観的な視点でNAZUNAを見られます。また、社内で人事担当を育てるより外部に任せ、自分たちのメイン事業である宿屋のサービスに集中したほうがお客さまのためになります」と言います。

 一方、外部委託だと、スピード感の欠如や、「Nazuna京都」の想いがダイレクトに伝わらないのではという懸念点が考えられるでしょう。その点については、「外部の個人と契約しているので直接コミュニケーションができているうえに、各自がNazuna京都に興味を持ち理念にも共感している前提でサポートしていただいているので問題ありません」と話します。

 一点、デメリットを挙げるならばNAZUNAのノウハウの流出が考えられます。これについて渡邊氏は「我々のサービスは簡単に真似できるものではありませんし、万が一流出するようなことが発生したとしても、自分たちの事業がうまくいくのであればそれでいい」と話します。

 最後に、「Nazuna京都」にとっていちばんの強みは従業員です。従業員が疲弊してしまうとモチベーションの低下にもつながるため、Nazuna京都の平均残業時間は月間10時間ほどだそうです。それが40時間を超えているとすればオペレーションを見直すべきであり、それを改善するシステムを検討すべきなのです。シフトに関しても、自動で組まれるソフトウェアを導入しているそうです。

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