リテールメディアコンソーシアム #03

日本の「リテールメディア」の実態と可能性とは?【リテールメディアコンソーシアム座談会・中編】

 

パーソナライズとマスの間にある心地よさ


島川 先日、ウォルマートがコネクテッドTVのVizio社を買収するという話を耳にしました。これはその際に伺った仮想ユースケースなのですが、私がスキー番組を見ていて、「家族でスキーに行きたい」と考えているときに、テレビから流れてくる広告の中で、「スキーウェアはお近くのウォルマートで」と、言われるとします。このくらいのパーソナライゼーションであれば、そこまで嫌らしくないですよね。

このような形で、お茶の間にリテールメディアを持ってくるような、パーソナライゼーションとマスの間の「心地よさ」を実現できたら面白いなと思いました。

大村 いまの例は、広告としてきても不快感がないですね。そこのバランスは本当に重要だと感じています。
 
ライオン ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン部長
大村 和顕 氏

 ライオン ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン部長。アイ・エム・ジェイにて、さまざまなナショナルクライアントのデジタル戦略策定およびWEB・アプリケーションの開発をプロデュースした後、2017年にライオンへ入社。2020年1月より各ブランドおよび新規ビジネスにおけるコミュニケーションの責任者として、ビジネス開発センター エクスペリエンスデザインを率いている。

杉浦 我々はデータをもっている分、逆にマーケティングをおろそかにしてきた部分もあったのかもしれません。一人ひとりをきめ細かく見て分析しなくても「毎日お店を営業していればお客さまが来てくださる」という状態もあったということです。

私が店舗勤務をしていたときに、郊外の店舗で、あるスキンケア商品を誤って大量に発注してしまったことがあります。困った私は、来店されるお客さま全員に対して、レジで「ご一緒にこちらのスキンケア商品はいかがですか?」と、直接声をかけていきました。そこにはターゲットという考え方も、One to OneもCRMも何もなかったのですが、ただひたすらお声掛けしたところ、お客さまは次々に購入してくれたんです。

一人ひとりにお声がけしてなんとか売り切ったという経験から、商売にはこういった側面もあるなと思ったりもします。
  

大村 もしかすると、メーカーがリテールメディアに期待する本質的なことは「習慣化」かもしれないですね。いま杉浦さんがおっしゃったように、おそらくレコメンドすれば一定数は購入されると思います。

しかし、それが1度ではなく習慣的に購入してもらえるようになるためのコミュニケーションが何かが知りたいと思います。それを知った上で、もっと大きなマーケティングに活かしていきたいのが、正直なメーカー側の思いですね。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録