関西発・地方創生とマーケティング #40前編

「靴下屋」タビオとDIY専門店・大都が実践、ビジネスをジャンプさせるクリエイティブな組織のつくり方 【ネプラス・ユー京都2024レポート】

 

ジャンプ=飛び降り、あるいは個人投資?


山田 僕も今回「クリエイティブ・ジャンプ」という言葉を初めて聞いて、自分たちがやってきたことで、それに当てはまることがあるかなと、まずいくつかピックアップして、考えてみました。

我々は元問屋ですので、メーカーから仕入れた商品をホームセンターに卸すというビジネスをやっていたんですが、全然儲からない。今日、この会場にホームセンターさんが来ていたら申し訳ないんですが、とにかくメチャクチャな要求をされて、180日の手形で全然キャッシュが回らないという状況でした。一時期、これ以上続けられない、もう廃業したいと先代にお願いするような場面もありましたが、先代からはとにかく会社を残してほしいとお願いされました。

一方で、リクルートは帰ってこいと言うので、帰ろうと思ったこともありましたが、やると言って入ったからにはやらなきゃいけない。新しい事業をやらないと会社が生き残れない。「赤字解消できなかったら廃業しますよ」と言ったんですが、当時いた社員さんが全然奮起せず、1年後に見事に赤字で、退職金払って全員解雇するという場面を乗り越えました。だから今、問屋業はしていません。

ただ、元々問屋業をやっていて、メーカーさんとのつながりは2代、3代に渡って深くありましたので、そのメーカーさんたちの商品をホームセンターに売るんじゃなくて、ホームセンターに来ているお客さんに直接売ろうということでEコマースを始めたのが2002年です。なので、Eコマースのスタートとしては早かった。特に業界の中では一番早かったんじゃないかと思います。ここが大きなひとつのジャンプと言いますか、飛び降りたという感じです。変わらざるを得ない状況の中で変わったというのが大きなところです。

かつ、仕入れて売るだけじゃなく、メーカーさんに対してはプラットフォームに登録してもらえれば、Amazonも楽天もYahoo!もトラノテも、全てに登録される。在庫もそれぞれの倉庫に何が何個あるというふうに連携する仕組みを作って、「バーチャル在庫」でビジネスをしています。そのバーチャル在庫はお客さんからは350億円分くらいあるように見えるというのは、今までにない面白い仕組みをつくったと思っています。



ーー 山田さんにとってのクリエイティブ・ジャンプは、数代にわたって続く問屋業から、メーカーから仕入れてホームセンターなどに卸すのではなく、ホームセンターに買いに来ている人に直接売る、Eコマースという仕組みを作った。それも、仕組みを変えないと生き残れないという状況の中で、飛び降りた、ジャンプした、とのことです。では、越智さんにとっては何なのでしょう。

越智 「クリエイティブ・ジャンプ」と聞いた時に、イノベーションとどう違うのかと考えました。イノベーションほど大掛かりじゃなくて、ビジネスモデルチェンジとまではいかないんですが、日々における、他の会社が選択しないようなこと、普通の組織だと選ばないような方向を選んで、のちに大きな成功を収めたりする。そういうのを「クリエイティブ・ジャンプ」と呼ぶのかなと。

コロナ禍中にeスポーツ大会が開けないということで、個人のお金を出資して大会を開いてもらいました。他にも、少年サッカー大会や音楽フェス、ライブ配信アプリ「17LIVE」にも出資しました。

そういうのが後々、つながるのです。音楽フェスに出資したことで、のちにアンバサダーを務めてくれる木村カエラさんとつながりましたし、eスポーツも全部つながりました。コロナ禍中に苦しんでいる人たちに出資したことによって、ビジネスにつながっている。これもクリエイティブ・ジャンプのひとつじゃないかと思っています。



ーー 越智さんは、クリエイティブ・ジャンプをイノベーションと対比して考えられていて面白いと思いました。そして個人で出資というのはなかなか凄いですが、日々において、普通は選択しないような方向に進んで、のちに大きな成功を収めることがクリエイティブジャンプだというお話しでした。

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