関西発・地方創生とマーケティング #40後編

「重要なのは唯一無二の組織カルチャーとリーダーシップ」 タビオと大都が見出したクリエイティブ・ジャンプの秘訣【ネプラス・ユー京都2024レポート】

 

クリエイティブ・ジャンプに必要なもの


ーー 最後にあらためて、それぞれが考えるクリエイティブ・ジャンプについて伺いました。

山田 毎週末に銭湯に行くので、サウナに2時間くらいいる時に、クリエイティブ・ジャンプって日本語で言ったら何なんだろうと考えると、いわゆる「非連続な成長」なのかなと思い至りました。

このカンファレンスに初日から参加している人は、クリエイティブ・ジャンプという言葉を何十回と聞かされて、「クリエイティブ・ジャンプしないとダメですか」と思っている人、いるんじゃないでしょうか。じゃあ非連続な成長って何なのかと考えると、こういう言葉があるじゃないですか。シュンペーターが言った「馬車を何台つなげても汽車にはならない」。産業革命の時に鉄道ができた時、それまで移動手段は馬しかなかったわけです。馬でいかに早く移動するかを考えて、ひょっとしたら馬が早く走るエサの開発とか、馬車の軽量化とか、ひたすら考えていた時代だったと思うんですが、そこからは汽車は生まれなかった。

それを思い出したとき、僕たち、日々の仕事の中で馬のことばっかり考えてるんじゃないかなと思ったんです。馬がいかに早く走るかをひたすら考えて仕事をしている。でも、次のステージに行くような成長をするには、馬を早くするんじゃなくて、人の移動を早くする、スムーズにするということを考えてジャンプしなきゃいけない。要は「アポロが月に行けたのは飛行機を改良したからではない」という話と同じで、「月に行く」という目的があったからです。クリエイティブ・ジャンプというからには、何に向かって、なぜジャンプするんですか。ジャンプしなきゃいけないんですか。会社それぞれの役割や、社会のために何をするのか。その目的に向かってジャンプするんだ、ということを考えるのが重要なんだろうなと思います。



越智 この1カ月、クリエイティブ・ジャンプって何かなと考えて過ごしました。他社の事例を見ても、この時期に大きなイノベーションとか、まさにクリエイティブ・ジャンプしていたら、もしかしたら今も発展していたんじゃないかと思う会社が幾つか浮かんで、うちも常に考えていかなきゃなと思いました。

その中で考えたのが、やっぱり組織ですから、サッカーチームのように考えるのが一番いいかなと。組織を組むとどうしても、守備の態勢のまま攻撃しなきゃいけなくて、左サイドの選手は左サイド、フォワードが必ず点を取らなきゃいけないとなりがちです。でも、これからは攻撃の時は上がれる選手は上がって、フォワードじゃなくてもチャンスがあればシュートを打って、そういう組織が強くなる。そういう組織のリーダーにならなければいけないと強く思いました。




ーー 以上、お二人のお話に共通するのは、考えることの大切さでした。そして私がこのセッションを通して、クリエイティブ・ジャンプに必要だと思ったのは、ユニークな組織文化とトップのリーダーシップです。お二人とも奇しくも創業家由来の方なので、そういう点ではアドバンテージもあるとは思うのですが、なかなかそれだけではできない。このお二人だから出来るのだと思います。

 そして、以前、越智社長に取材させていただいた時に言われて、今も頭をよぎるのが、「商業ではなく産業」という言葉です。タビオという会社を商業的に成功させるということではなくて、日本の靴下産業を絶やさない、継続させるためにはどうしたらいいかという視点で事業されていると。

 山田さんもおそらく、元々は大都という会社を潰さないためにはどうしたらいいかと考えて始められたと思うんですが、DIYという流れに沿って工具のE Cサイトを展開されて、結果的にそれが工具業界の継続、発展につながっているんじゃないかと思います。

 クリエイティブ・ジャンプに必要なものはユニークな組織文化だとしても、それを作り出すのはトップのリーダーシップだということ、そして皆さんもぜひ商業ではなく産業として自分のビジネスを考えていただけると、新たなクリエイティブ・ジャンプにつながるんじゃないかなと思いました。

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