最新ニュースから読み解く、物流とマーケティング #15

新商品が3日で3000SKU増える中国通販「SHEIN」、驚異的な投入スピードをどう実現?

前回の記事:
前年比400%越えの成長、普段明かされることのない中国通販サイト「SHEIN」衝撃サプライチェーンを大解剖
 Z世代の女性を中心に人気のSHEIN。EC通販関係者にSHEINを知っているかと尋ねたところ、10人中2人しか知らなかった。また、その2人のSHEINに対する印象は、デザインのパクリや劣悪な労働条件での製品づくりなど、ネガティブなものしかヒアリングできなかった。

 ところが、SHEINの商品を製造している中国・アパレル工場の社長と親しいディマンドワークス 代表の齊藤孝浩さんからは「(SHEINに協力する工場の社長)SHEINは中国・広州のアパレル産業の救世主だ」という意外な言葉を聴いた。

 そこで全3回に渡り、ディマンドワークスの齊藤代表とSHEINの数値データをもとに驚愕のサプライチェーンを解剖していく。第1回では、SHEINの売上高や取引先メーカーのランク付けシステムなどを詳しく紹介した。第2回では、SHEINの脅威の商品開発について解き明かしていく。

(左から)有限会社ディマンドワークス 代表 齊藤孝浩氏、筆者
 

3日で3000SKUという驚異の商品数


 新規商品の投入スピードが、3日で3000 SKU(Stock Keeping Unit:受発注・在庫管理を行うときの、最小の管理単位)という数字が、どれほど凄まじいか?筆者が所属しているカタログ通販のスクロールの商品開発と比較するとよくわかる。スクロールではカタログに掲載する商品の企画には6カ月かけて1500SKUというスピードだ。

 SHEINの驚異的な商品開発スピードは、SHEINの協力アパレル工場2000社との取引スキームと、AIを使った商品企画支援システムの2つが支えている。SHEINの協力アパレル工場との取引スキームは4つある。
 
  1. 自社工場・・・自社企画、自社生産
  2. OEM・・・・SHEIN企画、協力工場生産
  3. ODM・・・・協力工場企画、協力工場生産
  4. OBM・・・・協力工場ブランド商品の持ち込み(タグ付け替え)

 ※OEM(original‐equipment manufacturing):SHEINブランド商品を協力工場が作ること
 ※ODM(Original Design Manufacturing):SHEINブランドで協力工場が設計・生産すること
 ※OBM(Original Brand Manufacturing):協力工場ブランド商品をSHEINに持ち込み販売すること

 OBMは、中国国内で販売している会社が、販売中あるいは売れ残った在庫をSHEINに持ち込み販売する方法だ。中国国内のECモールで使った商品データ(画像、スペック)をそのまま使えるので即販売開始できる。実はSHEINは、中国国内での販売をしていないので、バッティングの恐れがない。

 また、アパレル企業のMDが「デザイン違いのどちらを選んで販売するのか?」という問題もSHEINでは両方販売する方法を取っているので悩む必要はない。

 たとえば、Tシャツのポケット有りと無しの場合に、両方販売開始してしまう。第1回で紹介したように、SHEINは100着単位でしか生産しないので、売れたほうを追加生産し、売れなかったほうはバーゲンで売り切るという手法をとっている。

 日本のリピート通販企業が得意としているABテストを行っているのである。常時数十万におよぶSKU商品を販売するSHEINのサイトは、まさしく毎日が新商品の人気投票の場となっている。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録