最新ニュースから読み解く、物流とマーケティング #16

アパレル業界のゲームチェンジャー中国通販サイト「SHEIN」、革新的なアプローチで時間とコストを大幅削減する裏側

前回の記事:
新商品が3日で3000SKU増える中国通販「SHEIN」、驚異的な投入スピードをどう実現?
 Z世代の女性を中心に人気のSHEIN。EC通販関係者にSHEINを知っているかと尋ねたところ、10人中2人しか知らなかった。また、その2人のSHEINに対する印象は、デザインのパクリや劣悪な労働条件での製品づくりなど、ネガティブなものしかヒアリングできなかった。

 ところが、SHEINの商品を製造している中国・アパレル工場の社長と親しいディマンドワークス 代表の齊藤孝浩さんからは「(SHEINに協力する工場の社長)SHEINは中国・広州のアパレル産業の救世主だ」という意外な言葉を聴いた。

 そこで全3回に渡り、ディマンドワークスの齊藤代表とSHEINの数値データをもとに驚愕のサプライチェーンを解剖していく。第2回では、SHEINの脅威の商品開発について詳しく紹介した。第3回では、プロモーション手法と物流について詳しく解説する。

(左から)有限会社ディマンドワークス 代表 齊藤孝浩氏、筆者
 

SHEINのプロモーション手法―「KOC」って何?


 齊藤さんによると、SHEINは起業時よりSNSの活用に長けている。たとえば Lookbook.nu(ストリートファッション系のインフルエンサーマッチングサイト)で有望なインフルエンサーの卵を見つけては無償で商品を提供し、彼女たちの着用画像にハッシュタグを付けて同社のサイトへ誘導してもらい、成果報酬のアフェリエイト料を支払うことで顧客流入を図っている。

 中国ではフォロワーの人数で呼び方を変えている。

 1. インフルエンサー=10万人以上
 2. KOL(Key Opinion Leader)=2万人~10万人
 3. KOC(Key Opinion Consumer)=1000人~2万人

 ファッション好きのKOCを発信元にしているため、Z世代のターゲットに直撃でき、コストパフォーマンスが良いプロンモーションを採用していると言える。

 また、Google広告、YouTube、Facebook、Instagram、X、Pinterest、TikTokと各国の顧客ターゲットと時代にあわせたSNSを活用して集客にしている。
 

SHEIN創業者 許仰天(クリス・シュー)氏とは


 SHEINは2008年、中国・南京で許仰天氏と他数人のパートナーで創業された南京希音電子商務有限公司が展開するウルトラファストファッションブランドである(現在はシンガポールに登記移転)。

 許氏は1984年生まれ、青島科学技術大学でコンピューターを専攻し、2007年に卒業。外国貿易のオンラインマーケティング会社でSEOエンジニアとしてキャリアをスタートし、自身でオンラインマーケティング会社を起業した後に、現在のSHEINの前身企業に参画した。

 他の多くのアパレル創業者と違うアプローチ手法で、マーケティングにもマーチャンダイジングにもデジタル技術を活用している。それはビッグデータに基づきテストを繰り返し、データに基づいて効率を重視しながら、アクションを起こしてグロース(拡大)するという、より合理的なビジネスアプローチとなっている。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録