リテールマーケティング最前線 #01

SHIBUYA109のポップアップストアがAIカメラを導入、映像データからマーケティングはどう変わった?

  若者トレンドの発信地として、渋谷のランドマークで多くの人に親しまれるファッションビル SHIBUYA109。その地下2階に「“未だ”世に出ていないものを“今”発信」すべくスタートしたフードポップアップストア「IMADA KITCHEN」がオープンしている。そこではAIを搭載したカメラを導入し、映像データを活用したマーケティング施策が取り組まれていた。

 今回は、「IMADA KITCHEN」を手掛けるSHIBUYA109エンタテイメント ソリューション事業部 IP開発部の渡貫舞氏と、AIカメラ・クラウド録画サービスを提供しているセーフィー 営業本部 カスタマーサクセス&エクスペリエンス部(現 営業本部 パートナービジネス事業部 パートナーアカウントグループ)の日座正和氏にインタビューを実施。AIカメラを導入した背景や意図、そこから見えてきた課題など、映像データを活用したリテールマーケティングの最前線について迫った。
 

通行量や滞留スポットを可視化するためにAIカメラを導入


――まずは、SHIBUYA109エンタテイメントで渡貫さんが担当している業務について簡単に教えてください。

渡貫 SHIBUYA109渋谷店の地下2階にフードポップアップストア「IMADA KITCHEN(以下、イマダ キッチン)」があります。ここは、“未だ”世に出ていない渋谷発のオリジナルフードを楽しめることをコンセプトに、「食」を切り口にして若い世代に来てもらうことを狙っており、さまざまなメーカーやブランドの商品プロモーションのお手伝いをしています。

またIP 開発部では、Z世代の知見を活かした商品開発を行うフードコンサルティング事業やMAGNET by SHIBUYA109(マグネットバイシブヤイチマルキュウ)の8階にある「CROSSING VIEW & ROOFTOP LOUNGE MAG8」の運営・管理業務も担当しています。
 
SHIBUYA109エンタテイメント
ソリューション事業部 IP開発部
渡貫 舞 氏

 新卒で鉄道系の商業施設運営会社に入社。首都圏にある駅構内店舗運営や施設管理業務に携わる。2022年にSHIBUYA109エンタテイメントに入社後は「イマダ キッチン」事業に従事。食品メーカーから地方飲食店まで幅広いクライアントへの営業を行いながら、出展確定後はPR・展開レシピや商品の調整、出展中の運営対応など、ブランド認知拡大における効果の最大化を目指し業務を行っている。

――SHIBUYA109におけるイマダ キッチンの狙いを教えてください。

渡貫 そもそも、なぜ「イマダ キッチン」という名前かというと、“未だ”世に出ていない渋谷発のオリジナルフードを発信するプロジェクトとしてスタートしたからです。「今だけ!」の期間限定商品、「ココだけ!」のオリジナルメニュー、「自分だけ!」の楽しみ方という3つの楽しむポイントと、「食」を絡めてトレンドの発信やトライアルの拠点として打ち出していくことで、出店者である食品メーカーさまの話題化を図るという狙いになります。
 
「IMADA KITCHEN」は企業と共に新商品を開発し、「渋谷発フード」の開発を目指している

イマダ キッチンでは、コンセプト設計からメニュー開発などの企画、デザインやクリエイティブ制作、店舗運営に至るまで、一気通貫でプロデュースさせていただくことが可能です。大手食品メーカーさんをはじめ、地方の飲食店にも出店いただくなど、さまざまな形でプロモーションを企画・実施する場として活用されています。

SHIBUYA109は、やはり商業施設全体としてはファッションのイメージが非常に強いです。ただZ世代はファッションだけでなく、エンターテインメントや食も含めていろいろなことに興味がある人が多いので、「食」の切り口で多様なトレンドを発信していくという目的があります。

――イマダ キッチンでは、AIカメラをマーケティング施策に生かしていると伺いました。AIカメラを導入するまでに至った背景や課題感について教えてください。

渡貫 イマダ キッチンでは、実施したポップアップの振り返りを期間終了後にクライアントさんと実施しているのですが、売上に関する数値はお伝えできているものの、AIカメラの導入前までは、それ以外に共有できる数値がほとんどありませんでした。

購入者へのアンケートは取っていますが、どうしても定性的な内容になってしまいます。たとえば、「美味しかった」という回答を集めてもどう美味しかったのかは、人それぞれの感想で異なります。そもそもアンケートに協力してくれるお客様もいれば、そうでないお客様もいるので、クライアントに対してもう少し数値や指標で客観性を持たせて、定量的に振り返りを実施していきたいという背景がありました。そこでイマダ キッチンの周りの通行量や滞留スポットなどを可視化させるべく、セーフィーさんに相談しました。

日座 イマダ キッチンさんに導入いただいた「Safie One(セーフィー ワン)」は、いわゆる防犯カメラとして様々な業態で活用されています。カメラ本体にAIが搭載されており、用途によってアプリが入れ替えられる仕様になっています。
  
セーフィー 営業本部 カスタマーサクセス&エクスペリエンス部(現 営業本部 パートナービジネス事業部 パートナーアカウントグループ)
日座 正和 氏

 新卒で金融機関に入社。法人営業担当として様々なお客様の経営課題に携わり、その後鉄鋼業界のアナリストとして従事。2021年にセーフィーに入社し、直販営業を経て、現在の中核製品であるSafie Oneのビジネスオーナーとしてリリースを担当。その後、カスタマーサクセス&エクスペリエンス部にて、小売や商業施設を対象に顧客のビジネス課題に向き合いながら、「映像」×「データ」の組み合わせによる解決手法を提供。

アプリを活用することで、たとえば、人の立ち入りや滞留の状況を確認できます。計測したいエリアを設定すると特定の棚の前に滞在していた人数を自動で集計することができ、ダッシュボードではそれらをグラフ化して表示しています。

従来、多くの店舗で活用されているPOSデータだけだと分析できる内容にも限界があります。カメラで撮影した映像データとAIを用いることで来店人数を正確にカウントできるので、POSデータと組み合わせることで深い分析ができ、マーケティング施策にも活用できます。

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