ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #61

世界有数の超大手ドラッグストア「ウォルグリーン」は、なぜ不振に陥ってしまったのか

 

ウォルグリーンの100年以上続いた上場の歴史が終わる


 世界で1、2位の売上を争う大手ドラッグストアのウォルグリーン(正式名:ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、店舗名:Walgreens)は、かつて日本のドラッグストアの目指すべき姿とされていました。日本のドラッグストア幹部による視察ツアーが行われ、筆者も29年前のセイジョー(現マツキヨココカラ&カンパニー)店長時代に視察し、現地の店舗マネージャーの話を聞きました。

 そんなWalgreenが近年の経営不振が原因でプライベートエクイティ(PE)投資会社のシカモア・パートナーズに買収され、非公開化で合意しました。要因が書かれた様々な記事がありますが、誤謬が多いので筆者の見解を記載します(参考:米国のドラッグストア上位の状況と戦略を知りたい方は筆者のブログ)。
 

オピオイド訴訟で8500億円の損失


 米国のドラッグストア大手CVSヘルスとウォルグリーンは、オピオイド危機への関与で2022年から2023年にかけて、大規模な訴訟に直面しました。オピオイドとは、モルヒネやオキシコドンなどの鎮痛剤で、適切に使用すれば効果的な痛み止めですが、高い依存性と乱用リスクがあります。

 両社は処方薬の適切な管理を怠ったとして訴えられ、CVSヘルスは10年間で約50億ドル、ウォルグリーンは15年間で約57億ドル(8,500億円:1$150円換算)の和解金の支払いに合意しました。なお、薬局事業を持つ世界最大の小売業ウォルマートも約31億ドルの支払いに同意しています。
 

物販の売上不振


 ウォルグリーンもCVSヘルスも売上高の約75%を調剤で稼いでいます。飲み合わせ相談も含めてのサプリメント販売、ヘルス&ビューティの核としての化粧品、地域生活者の来店頻度を増やすためのグロッサリー食品といった物販が約25%というビジネスモデルです。
 

ECの伸長と対応の弱さ


 直近15年で、AmazonをはじめとしたECの成長により、医薬品や食品以外の商品はネット販売に奪われました。ウォルグリーンとCVSヘルスも自社ECサイトを運営していますが、WalmartやTargetと比べると、オムニチャネルの進展や価格競争で大きく遅れをとり、シェアは獲得できていません。この課題は日本のドラッグストアにも共通しています。
 

化粧品小売業の急成長


 さらに、世界的に急成長した化粧品小売大手の影響も大きく受けています。具体的には、セフォラとアルタ・ビューティです。これらの企業はDXを上手く活用し、急成長しています。化粧品販売において、ウォルグリーンやCVSヘルスが主導した時代はとっくに終わっています。

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