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リテールから考える「マーケティングの本質論」 #01

小売業のマーケターは「伝道師」になろう

 マーケティング部門が担当する領域は幅広く、その仕事内容は各社で大きく異なります。なかでも小売業のマーケターの主たる役割は、「企業を儲けさせること」です。本コラムでは、コストセンターとして見られがちなマーケティング部門が、利益を生み出す部門になるために必要な「本質」について、リテールの視点から追求していきます。

日本の小売業が抱える大きな問題

 大量出店、大量仕入れ、大幅値引き。これが現在、日本の小売業における大きな問題になっています。

 かつて買い物の中心は、百貨店と総合スーパーでした。消費者にとって、ひとつの場所で全ての買い物を済ませることが、もっとも効率的だったためです。

 企業側は、その消費者のニーズに応えるため、幅広い商品を大量に仕入れて、大量に売るという方法をとっていました。日本の小売業に、マーケティング的な思考は存在していなかったと言っても、過言ではないと思います。

 この考え方が通用した背景は、社会全体が均一化され、皆が同じものを欲しがった時代だったためです。私は現在43歳です。40代が集まった場で、男性にはビックリマン、女性にはキャベツ人形の話を出せば、だいたい盛り上がります。これこそ均一化の時代があったことの証です。

 均一化の時代が終わり、消費者の価値観が多様化しました。しかし一方で、小売業を見れば、同じような商品ばかり扱う大型商業施設が各地にできて飽和状態。個性的な店舗が増えずに、どこに行っても代わり映えのしない店舗が並びます。

 少し古い調査ですが、「百貨店に関するアンケート」(出典:DIMSDRIVE
http://www.dims.ne.jp/timelyresearch/2007/071002/ )では、百貨店に行かない理由として、「百貨店に行かなくても欲しいものが買えるから」と答えた人が4割にもなるそうです。

 経済産業省の商業統計では、2014年の小売業の事業所数は約77万、売り場面積1.3億㎡。それに対して7年前の2007年は、事業所数約113万、売り場面積1.4億㎡です。床面積は、ほぼ同じなのに店舗数が3割も減っています。つまり店舗が大型化しているということです。

 その結果、売場を埋めるために仕入れ拡大を行い、大量の在庫が残り、大幅な値引きを行って、最後はすずめの涙ほどの利益が残る。当然、利益は顧客サービスの原資となるため、サービスの質も低下していく。これは企業だけではなく、消費者にとっても、良いこととは言えなさそうです。

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