関西発・地方創生とマーケティング #07
5年連続出願数No.1を実現した、近畿大学の“街づくり志向”と“コミュニケーション戦略”【世耕石弘 インタビュー】
2018/11/28
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近大の飛び抜けた大学運営に迫る
近畿大学のコミュニケーション戦略を担う、総務部長の世耕石弘さんの前職が、私が務める近鉄であったというご縁から、ある方の紹介がてら「近大東大阪キャンパス」を訪れました。その時の話が多岐にわたり、とても面白かったので皆さまに共有します。今回は、大学運営とそのコミュニケーション戦略がテーマです。
世耕 石弘 氏
近畿大学 / 総務部長 奈良県出身。大学を卒業後、1992年近畿日本鉄道株式会社に入社。以降、ホテル事業、海外派遣、広報担当を経て、2007年に近畿大学に奉職。入学センター入試広報課長、同センター事務長を経て、2013年4月より広報部長代理、2015年4月より広報部長、2017年4月より広報部が総務部広報室となり総務部長、現在に至る。
近畿大学 / 総務部長 奈良県出身。大学を卒業後、1992年近畿日本鉄道株式会社に入社。以降、ホテル事業、海外派遣、広報担当を経て、2007年に近畿大学に奉職。入学センター入試広報課長、同センター事務長を経て、2013年4月より広報部長代理、2015年4月より広報部長、2017年4月より広報部が総務部広報室となり総務部長、現在に至る。
皆さんは、大学が地域に果たす役割には、何があると思いますか。いろいろ挙げられると思いますが、その中には「街づくり」という観点もあります。
近畿大学が2017年に新築した校舎には、女性専用エリアを含む24時間利用可能な自習室があります。試験期間中は、夜中の3時まで勉強する学生や、逆に3時から明け方まで利用する学生もいるようです。電車も動いていないのに、どのように通うのかと尋ねると、近くに住む学生が利用すると言います。
この施設をつくることによって、奈良など比較的近くて自宅から通える学生にも、大学の近くに住む理由を提供している、と言います。そして、たくさん学生が住む街にしたいという狙いがあるようです。新しく校舎を建てるときに、そこまで考えていたのかと感心しました。
このような街づくりは、まさに鉄道会社が得意として取り組むべきことですが、ひょっとすると、世耕さんが近鉄出身だから、このような発想が生まれるのかもしれないなと思いました。また、これ以外にも、編集工学研究所の松岡正剛さんが選書した図書館や、米国の放送局「CNN」がプロデュースするカフェなど、学生が喜ぶ、大学に来たくなる仕掛けがたくさんあります。
「それは優秀な教授陣による素晴らしい授業だと思われがちだけど、実はそれだけではなく、今はコミュニケーション戦略に力を注いで、志願者数を伸ばすことが重要」
これは“大学として、違うのではないか”と思われる方もいると思いますが、「理想は教育だけど、誰もそれだけで決めてはいない」と世耕さんは語ります。
受験者が増えれば、必然的に受験者の幅も広がり、自ずと優秀な学生も受験するようになる。そして、学生のレベルが上がっていくということを、狙っているのではないでしょうか。
とは言うものの、近畿大学のコミュニケーション戦略に重要な役割を果たしている「近大マグロ」にしても、それまでにない独創的な研究に挑み、その成果を社会に活かして収益を上げるという「実学」に基づくもの。実は、とても本質を捉えているのではないかと思います。
後日談ですが、近大マグロの水産研究所についても、観光的要素でたくさんの人に来てもらい、現場で実学の大切さを感じてほしいと話していました。