関西発・地方創生とマーケティング #07

5年連続出願数No.1を実現した、近畿大学の“街づくり志向”と“コミュニケーション戦略”【世耕石弘 インタビュー】

コミュニケーション戦略では、数字を意識

 近大が昨年度発信したリリースの数は、577本。そのうちメディアに取り上げられた数は263本、実に打率5割に迫ります。一方、関西の他の私立大学では、発信数は年間100本にも満たず、打率は2割5分程度とのことです。

 自分たちの仕事の成果をきちんと数字でおさえ、現状をきちんと受け入れて、自分たちが今どこにいるのか、常に競合を意識しているということは、とても大切なことだと思います。
 

面白いアイデアは、どう集める?

 大学のパンフレットには、どのようなイメージを持ちますか。学部学科ごとに小難しい説明と、きれいなキャンパスの写真。でも、近大は、例えばこんな感じです。
 
ちなみにビフォーは受験用、アフターは学生証の写真だそうです。表情が全然違いますね。
 小難しい説明が並んでいても、自分に関係あるのは一部で、その他大部分はただの紙。そういう情報は、Webサイトに任せて、とにかく読む気になるものにしたそうです。まるで雑誌のようですが、実際に雑誌の出版社に制作を任せているそうです。

 その理由は、広告代理店のクリエーターよりも編集者の方が面白いからとのこと。世耕さんいわく、彼らは必死で「売ること」を考えているから。

 そうして、日頃から面白いことばかりに取り組んでいると、ユニークな企画にチャレンジする大学だと認識されて、さらに面白いアイデアが持ち込まれるそうです。

 最後に、近大のこの秋のクリエイティブについてのこぼれ話を。
 
ポスター
 ジョーズかと思いきや近大マグロという、まさしく大阪ならではです。このクリエイティブには、大手代理店は各方面の了承が得られるのならという条件付きだったのです。

 「そんなもん、OK出るわけないやろ!」と、大手代理店を通さずデザイン会社と共同で制作して実現したそうです。大手でなくても、こういうクリエイティブができるのか、という話から代理店との仕事の進め方についての話になりました。

 企業によって、広告代理店の担当者がオフィスに常駐しているケース、常駐はしていないけど常にキーパーソンが一緒に動くケース、毎年コンペで代理店が変わるケースなど様々です。感覚的に、この順番はマーケティングに強い企業順のように感じていましたが、近大は毎年コンペをするようです。

 これに関してはご一緒した方いわく、近大のコミュニケーション担当部署が、戦略がきちんとしていて、ディレクション能力があり、制作のみを外注すればいいレベルにあるからなのではないかと。

 要は自分のことは自分が一番わかっていてなくてはならず、それが当たり前であり、そうあらねばならない、というシンプルなことだと仰っていました。

 さて、皆さんはどうされていますか。そしてそれはベストだと思っていますか?

 と、ここでちょうど娘が帰宅してパソコンを覗き込み、「あ!これ近大のポスターやろ。駅で見た時、一瞬ユニバの年パスかと思ったけど手に持ってるんが年パスちゃうし、近大やと気づかんくらいのクオリティやけど、その分気づいた時の関心が高まるから効果ありそう」と言っていました。

 Attention、interest…。意外に近い所に、マーケターがいるものです(笑)。
 
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