NRF2026レポート:NRFから読み取れる2大潮流と日本企業のための3つの行動原則【300Bridge 藤原義昭氏】
日本企業の現在地 ― 「内向き・部分最適」の限界
NRF 2026で描かれた「The Next Now」の世界観に対し、日本企業はどのような立ち位置にあるのでしょうか。IPAや経済産業省の最新レポートからは、日本企業が抱える構造的な課題が浮き彫りになっています。
▶︎データが示す「周回遅れ」の実態
まず、DXの「目的」における決定的な乖離です。経済産業省のDXレポートによれば、日本企業は「業務効率化」や「コスト削減」といった「内向き」の成果に偏重しています。一方、米国やドイツでは「新規製品・サービスの創出」や「顧客満足度向上」といった「外向き」の価値創出で成果を上げています。2026年の世界の小売業が「人間的な熱狂」や「信頼」を競っている中で、日本はいまだ効率化に力を入れています。
▶︎組織のサイロ化と「守り」の姿勢
次に、「守りの姿勢」によるスピードの欠如です。生成AIの導入において、日本企業は「リスクへの理解不足」や「誤回答への懸念」を理由に足踏みする傾向が強く、特に中小企業では8割近くが関心を持ちつつも具体的な予定がない状態です。Targetが「数週間」でアイデアを実装するスピード感とは対照的に、日本はリスク管理の議論で停滞しています。
そして、最大のペインが「組織のサイロ化」と「人材不足」です。経営層、IT部門、業務部門の協調が米独に比べて弱く、全社最適ではなく部署ごとの「部分最適」に陥っています。さらに、戦略から実装までを一気通貫で描く「ビジネスアーキテクト」が圧倒的に不足しており、これが変革のボトルネックとなっています。レガシーシステムの刷新も道半ばであり、データ連携の基盤が整っていないため、AIを走らせる以前に、データを整備するインフラさえもうまくできていません。
2026年に日本企業がやるべきこと
周回遅れの現状を打破し、2026年の基準にアジャストするために、日本企業は「効率化」のその先へ踏み出す必要があります。
【1】マインドセットの転換:「No, because...」から「Yes, if...」へ
リスクを理由に「No」と言う減点主義を捨て、DICK'S Sporting Goodsが実践する「Yes, if...(やろう、もし~ができれば)」がまさにというわけです。経営会議から現場まで徹底すべきです。 「セキュリティが心配だからAIを使わない(No, because)」ではなく、「個人情報を含まない社内データに限れば使える(Yes, if)」と考える。この実現条件を議論する文化こそが、イノベーションの速度を劇的に高めます。
【2】リソース配分の再定義:効率化をゴールにしない
DXで削減したコストや時間を、単なる利益確保(PL上の数字)に回してはいけません。LVMHやTargetのように、AIにルーティンを任せて浮いたリソースを、必ず「顧客との感情的なつながり」や「クリエイティビティ」へ再投資する戦略が必要です。AIをインフラとし、人間をフロントに立たせることで初めて、差別化が可能になります。
【3】組織と連携のOS書き換え
最後に、組織構造の変革です。従来のピラミッド型組織ではなく、DICK'Sのような「顧客を頂点とするダイヤモンド型組織」へ移行し、現場への権限委譲を進めるべきです。また、Ulta BeautyはマーケティングとITが隣り合う「フィールドモデル」を採用しているそうです。物理的な壁を取り払うことも有効です。DXレポートにある日本の最大の欠点は「ビジネスアーキテクト人材」であり、外部企業や外部人材を「発注先」ではなく「戦略的パートナー」として組織内部に招き入れ、共に走る(Co-create)体制を一気に構築することが、スピード不足を解消する鍵となります。
効率化の先にある「熱狂」へ
NRF 2026で示された「The Next Now」は、未来予測ではなく、今まさに起きている現実です。AIによる効率化はもはやゴールではなく、スタートラインに過ぎません。AIで極限まで効率化した上で、人間にしかできない「熱狂」や「信頼」を生み出せる企業だけが生き残ることができます。
日本企業にとって、これは危機であると同時に好機でもあります。「おもてなし」や「現場力」という日本独自の強みを、AIという最強の武器で拡張できたとき、世界最高峰の顧客体験が生まれるはずです。今すぐ「社内の都合」から「顧客への価値」へと書き換え、「Yes, if...」の精神で第一歩を踏み出すことが重要です。
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